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今治市が廃ヘルメットを屋台型の箱で集めて街のファニチャーに変える

SDGs
2026.10.14
・読了目安 7分

今治市が廃ヘルメットを屋台型の箱で集めて街のファニチャーに変える

今治市サイクルシティ推進協議会と乃村工藝社が、使わなくなった自転車用ヘルメットを粉砕して再生素材にし、2027年3月にファニチャーとして市内に設置する。屋台型の回収箱と工程表から、回収素材の販促物の組み方を読む。

使わなくなった自転車用ヘルメットを粉砕して再生素材にし、街で使うファニチャーとして戻す「IMABARI REHELMプロジェクト」について、今治市サイクルシティ推進協議会と株式会社乃村工藝社が本格展開を2026年10月8日に発表した。協議会の事務局は今治市サイクルシティ推進課で、地域企画パートナーに株式会社麓が入る。2026年10月25日の「サイクリングしまなみ2026」で発信し、ファニチャーの発表と市内への設置は2027年3月を予定する。販促やイベントの担当者が見るべきは完成した家具ではなく、集まる量が読めない素材で公開日だけ先に決めた段取りのほうだ。

目次

屋台のように街を移動する回収箱、Re: HELM号は置き場所を持たない

2025年に作ったものの一つが、可動式の回収ボックス「Re: HELM号」である。発表文はこれを「屋台のように街を移動し、地域の風景に溶け込む可動式ボックス」と説明している。固定の回収拠点を構えるのではなく、人が集まっている場所へ箱のほうが動く。

回収型の企画で最初に詰まるのは、たいてい置き場所だ。店頭に常設の回収箱を置けば、スペースの交渉と、来てもらうための告知費が同時に発生する。箱が動くなら、交渉相手はイベント主催者や商店街の当日運営に変わり、告知はその場の人通りが肩代わりする。撤収できる什器には、常設の許可も場所代も要らない。

もう一つ、Re: HELM号そのものが媒体として働いている。2025年に協議会が用意したのはシンボルマーク、PR映像、そして回収ボックスで、完成品のファニチャーは入っていない。回収する装置と見せ方を先に作り、作る物を後ろに回した。自社で組むなら、回収箱のラッピングと回収時の声かけ文を先に固め、ノベルティのデザインは素材が集まってから決める順番になる。

なお、回収の受付場所・期間・条件は今回の発表文には書かれていない。

2025年に板材化を検証して、ファニチャーの発表は2027年3月に置いた

工程表は2025年から2027年5月まで引かれている。2025年はシンボルマーク、PR映像、Re: HELM号、そしてヘルメットの板材化の検証。2026年は10月25日の「サイクリングしまなみ2026」で発信し、地元の高校生が海外からの参加者に英語でプロジェクトを紹介する。2027年3月にファニチャーを発表して市内に設置し、2027年5月の国際会議「Velo-city 2027 Ehime」へ向けた発信を見据える。

素材化の検証が2025年に終わっているのに、完成品の仕様はいまも「ファニチャー」という括りのままだ。ベンチなのか椅子なのかテーブルなのかは発表文に書かれていない。品目を名指ししなければ、粉砕の歩留まりが出てから作る物を決められる。

乃村工藝社には先行する別の型がある。2023年9月に発表した「SCRAPTURE」は、建材や内装素材から出た廃材を粉砕し、再生ビニールの透明表皮に封入して座れる椅子にしたものだ。DESIGNART TOKYO 2023で展示し、一定期間が終わったら廃材を取り出して天板などの装飾材に回し、新しい廃材を入れ直す。封入方式なら、素材の形状が揃わなくても成立する。今治で検証した板材化は形と厚みを揃える方向で、封入方式より前処理の手間が重くなる。

愛媛の着用率70.3%は全国平均21.2%の3倍、買い替えが先に起きている

回収型の企画は、その地域にその廃棄物がどれだけあるかで成否が決まる。広島県警察本部交通部交通企画課がまとめた令和7年の全国調査結果では、自転車乗車用ヘルメットの着用率は愛媛県が70.3%で1位、全国平均は21.2%だった。2位の大分県が53.7%、3位の山口県が49.9%で、広島県は11.5%の37位。愛媛は全国平均の3倍を超えている。

着用率が高い県では、数年遅れで古いヘルメットが家庭に溜まる。今治市の発表は、日本ヘルメット工業会が示す耐用年数の目安を3年としている。買い替えを促す安全啓発と、出てきた古いヘルメットの回収を同じ企画に束ねているのは、この2つがつながっているからだ。着用率が1割台の県で同じ企画を立てても、母数が足りない。

ただし数字の扱いには注意がいる。発表文はレンタサイクルの2025年度貸出台数を173,279台(一般社団法人しまなみジャパン、2026年4月時点の速報値)として挙げているが、これは貸出の件数で、ヘルメットの保有数ではない。自社で回収企画の見積りを立てるときも、交通量や来店数ではなく、対象物の交換サイクルと地域の保有数から積む必要がある。

外殻の樹脂とEPSとナイロンのあごひもが、1個のヘルメットに同居する

ヘルメット1個は複数の素材でできている。米国のBicycle Helmet Safety Instituteの解説では、多くのヘルメットがプラスチックの外殻、EPS(発泡スチロール系)の内装、ナイロンまたはポリエチレンのあごひも、プラスチックのバックルを備える。外殻はPETなら再生に回せるが、上位モデルに多いポリカーボネートは自治体の回収に出せず、ABSは理論上は再生可能でも実際には行われていないと書かれている。地域のリサイクルは混合素材を受け取らないため、分解が前提になる。

ここが原価の実体だ。粉砕の前に、人の手で外殻・EPS・ベルト・バックルを分ける工程が入る。回収素材のノベルティで見積りが高く出る理由は素材代ではなく、たいていこの前処理にある。発注側が確認すべきは、1個あたりの分解時間と、混ざっても構わない素材の範囲の2点だろう。同解説は、2024年に2分で分解できるヘルメットが登場した一方、米国のリサイクル施設には2分でも長すぎるとも指摘している。

素材側の動きもある。2013年にPolysourceが再生EPSの「Round2」を出し、初期の評価では新品のEPSに近い性能とされた。2016年にはGiroがトウモロコシ由来のE-PLAを内装に使ったモデルを出している。設計の段階で分解を想定していない物を集めると、後工程が重くなる。

しまなみ2026は先着枠に24,000円を上乗せし、出走権だけの枠を抽選にした

発信の場に選ばれた「サイクリングしまなみ2026」は、広島県と愛媛県を結ぶ西瀬戸自動車道の本線を走るイベントで、サイクリングしまなみ実行委員会が主催する。広島県が出した資料によると、2026年10月24日が受付と併催イベント、25日が大会当日。定員7,000人、8コースで、レースではなく走行イベントとされている。

枠の配り方が、そのまま販促の配布設計に移せる。プレミアムエントリーは先着順で、出走権に特製ジャージと地元特産品が付き、参加料は一般エントリー料金に24,000円を上乗せする。ふるさと納税エントリーも先着順で、返礼品として出走権を贈る形を取り、今治市のEコースが100名、上島町のGコースが50名と定員を開示している。一般エントリーは出走権だけを申し込む枠で、こちらは抽選。募集開始も分けてあり、先着の2枠が4月13日20時、抽選の一般枠が4月20日20時から、締切は3枠とも5月18日23時59分にそろえた。

先着は早く動いた人に報いる形で、上限を決めた時点で原価が固定される。抽選は応募そのものを集めたいときと、公平さを見せたいときに効く。特典を厚くした枠を先着、素の枠を抽選に置き、受付開始を1週間ずらして先着枠から埋める。数量に上限のあるノベルティと応募型キャンペーンを同時に走らせるとき、この並べ方はほぼそのまま使える。

購入を条件に全員へ配る総付景品には、一般論として取引価額に応じた上限が設けられており、抽選で配る懸賞は別の基準で見る。線引きは消費者庁の運用基準や専門家に当たる前提で組みたい。今治の回収にはそもそも購入条件がなく、来る人は物を出す側である。景品の上限よりも、持ってくる手間に何を返すかが論点になる。

松坂屋の319.4トンもFDAの30個も、素材の量が先に決まっている

回収素材を使う販促物では、素材の量が先に決まり、品目と個数が後から決まる。松坂屋静岡店が回収衣料をオーナメントにした企画では、319.4トンという数字が店舗単位の製品数ではなく全店の回収量だった。FDAが旧制服をポーチとマルチケースにした例は、ポーチ30個とマルチケース50個という、作れた数そのままの数量で売り出している。前年の懸垂幕を5施設から集めて7アイテムにした企画も、大会3日前までに届く納期で回していた。

この順番を逆にすると見積りが崩れる。「500個欲しい」と先に言えば、足りない分を新品材で埋める提案か、納期を後ろへ倒す提案が返ってくる。確認の順は、集まる素材の重量か枚数、分解と洗浄の手間、1個あたりの取れ高、作れる品目、そして最後に個数。ロットの下限も素材側で決まるため、見積りを取る前に「何個から作れるか」ではなく「何kgから作れるか」を聞いたほうが話が早い。

今治が2027年3月に何を市内へ置くのかは、まだ決まっていない。屋台のように動くRe: HELM号が、それまでに何個のヘルメットを預かれるかで決まる。

参照元

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編集:食品ノベルティの窓口 編集部(株式会社Agriture)
農業×食のOEM窓口として、業界動向を編集部がまとめています。
最終更新:2026.10.14
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この記事を書いた人

小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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