デザポケ(東京都千代田区)が2026年10月6日、スクイーズのOEM製造に「水感」タイプを追加したと発表した。ぷにぷにと重みのある手触りで、Z世代や推し活層に広がっている素材だという。販促の担当者が知りたいのは流行そのものではなく、この立体物を自社の企画に乗せられるのか、乗せるなら何個からで、配り方にどんな制約がかかるのかという点だろう。発表文と同社の解説ページ、それに消費者庁の景品規制を並べて読むと、スクイーズは数量で単価を作る商品であり、同時に単価が規制の天井に当たりやすい商品でもあることが見えてくる。
3Dデータがなくても受けるという一行が、発表文でいちばん実務に効く
デザポケが挙げた強みは8項目ある。ポリウレタン素材と水感素材など複数の質感に対応する、量産前に実物サンプルを作る(オプション)、海外提携工場の専用ラインで量産して検品と検針をかける、金型代を大ロットで償却して単価を抑える、台紙作成と透明パウチ封入・封止めまで済ませた状態で納品する、複数拠点への分納や指定場所への一括納品に対応する、ロットに応じたコストプランを出す——といった内容だ。
このうち発注側の手間を実際に減らすのは「3Dデータがなくても専任デザイナーがデザインから立体化まで支援する」という項目になる。販促の現場にあるのはロゴのAIデータとキャラクターのイラストで、3Dの形状データは普通ない。解説ページでも、平面データから専用の3D金型を設計する工程を同社が持つと説明している。立体物の発注で見積もりが止まる原因はたいてい「形状データを出してください」の一言なので、ここを相手側が引き受けるかどうかは進行速度に直結する。
一方で、発表文には価格・最小ロット・納期・製品サイズの数値が一つも載っていない。解説ページには「もちもち」「ぺたぺた」「ふかふか」の3タイプごとに仕様とロットと概算費用を示した表があるが、画像で掲載されているためテキストでは読み取れず、価格は2026年10月時点の税抜きという注記が付く。数字は問い合わせて取る前提の発表だと理解しておくほうがよい。
最小は500個、ただし同じ金型代が1個に乗る重さは3,000個で6分の1になる
数量の記載は発表文と解説ページで性格が違う。解説ページは最小ロットを500個からとしている。発表文のほうは、3,000個以上の大ロットで金型コストを償却して単価を大きく抑えられる、と書いている。つまり「3,000個から作れる」ではなく「500個でも作れるが、金型代の1個あたりの負担が重い」が正しい読み方になる。
ここは算術で押さえておくと見積もりの読み方が変わる。金型代が同額なら、500個で割ったときに1個が負う初期費用は3,000個で割ったときの6倍だ。金型代が10万円でも30万円でも、この6倍という比率は動かない。だから業者に聞くべきは「単価はいくらですか」ではなく、金型代がいくらで、金型代を除いた成形・加工の単価がいくらで、数量のどこで段が変わるのか、の3つを分けた形になる。この3つが分かれていない見積もりは、数量を増やしたときにどこまで下がるのかを社内で検証できない。
数量で単価の段が変わるのはスクイーズ固有の話ではない。99枚より100枚のほうが安くなるマルシェバッグのように、1枚から頼める布物でも段差は存在する。違いは段差の大きさで、金型を新しく起こす商品はその一段が深い。既製品に名入れする商品と比べて、最小数量そのものも桁が変わる。10個単位での試し発注は、金型から起こす成形品では成立しない。
全員に配るなら製造単価200円が天井になり、2027年にその線が動く可能性がある
単価の話は社内の予算だけで決まらない。一般論として、購入者や来店者にもれなく渡す景品(総付景品)には上限が置かれている。消費者庁の整理では、取引価額が1,000円未満なら景品類の最高額は200円、1,000円以上なら取引価額の10分の2だ。購入を条件にせず来店者全員に配る場合は取引価額を原則100円とみなすため、上限は200円になる。
この200円が、スクイーズをノベルティに使うときの最初の壁になる。製造単価が200円を超えると、低価格帯の購入特典や店頭でのバラマキには回しにくい。デザポケの解説ページも、製造単価が200円を下回らなかった場合は購入プレゼントやキャンペーン景品でのバラマキができないと同じ趣旨の注意を書いている。
逆に、購入条件の金額を上げれば枠は広がる。税込4,320円以上の購入でキーホルダーを渡したバターバトラーのような設計なら、取引価額の10分の2は864円になる。条件金額をどこに置くかが、そのまま使える景品の単価を決めている。LINE追加と来店で缶バッジを配ったカプコンの企画のように購入を条件にしない配布は、取引価額100円みなしの枠に入る。
注意したいのは、先着順に逃げても枠は外れないという点だ。消費者庁の景品規制の説明は、商品やサービスの購入の申し込み順、または来店の先着順により提供される金品等も総付景品に該当すると書いている。「先着1,000名」と書いても単価の上限は残る。単価が200円を超えるなら、抽選の懸賞に寄せるか、そもそも有償の物販に切り替えるという判断になる。一般懸賞なら取引価額が5,000円未満のとき最高額は取引価額の20倍まで、総額は懸賞に係る売上予定総額の2%までという別の枠が適用される。
さらに、この200円という線自体が動きかけている。2026年8月末の秋田魁新報の報道によれば、消費者庁は物価上昇を理由に総付景品の上限引き上げを検討しており、消費者の購買行動への影響を見極めたうえで2027年にも見直す可能性があるという。現行の水準は2007年からで、変われば約20年ぶりになる。来年度にまたがる企画でスクイーズのような単価の張る立体物を考えるなら、告示の動きは見ておく価値がある。どの企画がどの類型に当たるかは個別判断になるため、実際の設計では所管官庁や専門家に確認したほうがよい。
流行の中心はバターとチーズ、その食品モチーフが通関で足を取られやすい
モチーフの選び方にも実務的な分かれ目がある。玩具業界誌The Toy Bookが2026年9月8日に報じた卸プラットフォームFaireの分析では、スクイーズ関連の検索が直近90日(2026年4月30日〜7月28日)で前の90日比185%増えた。棚を埋めたのはバター、チーズのくさび、クロワッサン、ケーキ、餃子といった食品の形だ。同じ分析は次の波を動物モチーフと見ており、ハイランドカウが219%、カピバラが198%、ウーパールーパーが170%の検索増を記録している。これらは検索と話題の指標で、販売実績ではない。
ところがデザポケの解説ページは、海外製造のためキャラクターや食品モチーフのデザインは税関検品で通関に時間がかかる場合があるとして、早めの相談を求めている。流行の中心にある食品モチーフが、海外生産では日程の読みにくい側に入っているわけだ。食品会社の販促で「自社商品の形のスクイーズ」を考えるなら、通関に取られる日数を逆算してスケジュールを組む必要がある。会期の決まっている展示会や周年企画に合わせるなら、動物モチーフに寄せるほうが日程の振れは小さくなる可能性がある。通関の所要は品目と時期で変わるので、見積もり段階で「食品モチーフの場合の納期」を別に出してもらうのが安全だ。
台紙とパウチ封入は納品状態に入るが、JANコードシールは貼付代行の扱い
仕上げの範囲も読み違えやすい。発表文では、台紙作成と透明パウチへの封入・封止めまで済ませた状態で納品するとしている。これに対してJANコードシールの貼付は「代行」、つまりオプションの扱いだ。解説ページでは布タグやプロフィールシールにも対応するとある。台紙とJANまで込みで届くと読むと見積もりがずれるので、JANは別費用として積んでおく。
この違いは用途で効いてくる。配布だけならパウチ止めで足りるが、ライブ物販やEC販売に回すなら台紙・パウチ・JANの3点が揃わないと店に出せない。発注の時点で配布用か販売用かを決めていないと、仕上げの範囲を後から足して単価が崩れる。複数拠点への分納と指定場所への一括納品に対応するとあるので、全国の店舗に撒く企画なら分納の可否と送料の持ち方も最初に確定させたい。
量産前の実物サンプルがオプションという点も、スクイーズでは軽く扱えない。この商品の価値は手触りと戻りの速さにあり、図面と色見本では判断できない。もちもちとぺたぺたとふかふかの差は、握ってみるまで社内の合意が取れない部分だ。金型を起こしてから質感が違ったとなれば、修正は金型からやり直しになる。サンプル費用は金型代と並べて、最初から予算に入れておく項目になる。
参照元
- PR TIMES・株式会社デザポケ「話題沸騰の「スクイーズ」OEM製造サービスを強化!Z世代・推し活層の心を掴むトレンドノベルティをオーダーメイドで制作」
- デザポケ「スクイーズノベルティ」解説ページ
- 消費者庁「景品規制の概要」
- 秋田魁新報「景品上限金額、引き上げ検討 物価高騰影響、27年にも」
- The Toy Book「Faire Report: Squishy, Slimy, and Analog Toys Trending」
最終更新:2026.10.15
