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松坂屋静岡店が回収衣料をオーナメントに、319.4トンは全店の数字

SDGs
2026.10.06
・読了目安 8分

松坂屋静岡店が回収衣料をオーナメントに、319.4トンは全店の数字

松坂屋静岡店が10月7日から12日まで、客から不要な衣料品を引き取る「エコフキャンペーン」を開く。今回はそこに集まった衣料の一部を静岡デザイン専門学校の学生がクリスマスオーナメントに作り替え、完成品を館内の大型クリスマス […]

松坂屋静岡店が10月7日から12日まで、客から不要な衣料品を引き取る「エコフキャンペーン」を開く。今回はそこに集まった衣料の一部を静岡デザイン専門学校の学生がクリスマスオーナメントに作り替え、完成品を館内の大型クリスマスリースや売場装飾として使う「未来をつくるオーナメントプロジェクト」を同時に走らせる。大丸松坂屋百貨店が10月4日に発表した。販促物を客に配るのではなく、客から集めた物を店の装飾として使い切る組み方で、回収から制作、設置までの段取りと、学校と組むときの実務が読みどころになる。

目次

集めた服がハートや星になり、館内のリースに吊るされる

進行は3段階で説明されている。エコフキャンペーンで引き取った衣料品の一部をアップサイクル素材に回し、静岡デザイン専門学校の学生がハートや星などのオーナメントに作り替え、完成したオーナメントを松坂屋静岡店館内の大型クリスマスリースや売場装飾として展示する。キャンペーン初日の10月7日には、学生がエコフの会場を訪れて衣料品回収の現場そのものを見学する予定になっている。

学生が店の装飾を手掛けるのは今回が初めてではない。リリースには2025年のホリデー装飾を同校の学生が本館1階婦人雑貨売場で制作している様子が掲載されている。さらに同店は三保松原の保全活動で集めた松ぼっくりをホリデー装飾に使う取り組みも続けてきた。地域の素材と地域の学校を装飾に組み込む枠組みが先にあり、そこに回収衣料という新しい素材を足した形だ。

319.4トンと2,672トンは静岡店の数字ではない

リリースには回収実績として2025年度319.4トン、2016年からの累計2,672トンという数字が載っている。ここは読み違えやすい。大丸松坂屋百貨店のエコフ公式サイトを確認すると、この数字はエコフ活動全体の実績で、「ECOFF衣料品回収BOX」の回収分を含み、集計は株式会社JEPLANによるものと注記されている。松坂屋静岡店1店の実績ではない。

数値 内容 対象範囲
319,373kg(319.4t) 2025年度の回収量 大丸・松坂屋のエコフ活動全体。衣料品回収BOX分を含む
2,672,244kg(2,672t) 2016年からの累計回収量 同上。2026年8月現在
104,810名 2025年度の参加者数 同上
964,703点 2025年度の回収点数 同上
前年比約30%増 参加者数の伸び 2026年4月に松坂屋静岡店で開催した回

店単位の数字として公表されているのは、最後の「2026年4月の松坂屋静岡店開催で参加者が前年比約30%増」だけだ。自社の取り組みを紹介するとき、グループ全体の累計を自店の成果のように並べてしまう書き方は社内資料でも起きやすい。数字を引用する前に、その数字の主語がどこまでを指しているかを原典で確かめる。ここを飛ばすと、桁が一つ違う主張を外に出してしまう。

回収の終わりは10月12日、制作に使えるのは2か月弱

段取りを日付で追うと、この企画の窮屈さが見える。素材が集まり始めるのは10月7日で、会期の終わりは10月12日。設置日は公表されていないが、クリスマスの装飾として館内に出すのであれば、12月のホリデーシーズンには出来上がっている必要がある。素材の受け渡しから展示までに使える時間は、長く見ても2か月に届かない。

この短い期間に、回収品の選別、裁断、制作、検品、吊り具の取り付け、設置という工程が全部入る。古着を素材にする企画では、洗浄をどちらが負うのか(持ち込む客に求めるのか、素材に回す側で処理するのか)も先に決めておかないと、工程表がそこで止まる。回収品が素材である以上、色や生地の構成は事前に決められない。デザインを先に固めてから素材を探す通常の販促物制作とは手順が逆で、集まった物を見てからデザインを合わせる進め方になる。だから作るものを「ハートや星」という単純な形に寄せている点は、工程設計として筋が通っている。複雑な形にすると、生地の厚みや伸縮のばらつきで歩留まりが落ちる。

似た段取りは他のアップサイクル販促にも出ている。前年の大会で使った懸垂幕を素材に5施設で7アイテムを作り、大会の3日前に納品した例や、退役した制服をポーチ30個とマルチケース50個に作り替えた航空会社の例では、作る数量が先に出ている。素材をどこから調達するかで、数量を宣言できるかどうかが変わる。客からの回収品のように素材の内容を事前に読めない場合は、数量を先に出さない設計のほうが安全側に立てる。

学校と組むなら、素材を渡す前に4つを決めておく

学生との協働は人件費が軽く見えるぶん、取り決めの抜けが後から出る。発注側が素材を渡す前に紙に落としておきたいのは次の4点だ。

ひとつ、著作権の扱い。作品に創作性があれば著作物になり、著作者は作った学生で、学校に自動的に権利が移るわけではない。もっとも、美術の著作物の原作品を持っている側は、著作権法の規定により原作品を公に展示できる。館内に飾ること自体は所有者の立場で成り立つことが多い。一方で、撮影して店のSNSやチラシに載せる行為は複製と公衆送信にあたるので、展示とは別に利用の範囲と期間を学校経由で合意しておく。「飾る」と「写真を広告に使う」を同じ許諾でまとめないことが要点になる。

ふたつ、学生側の対価と実習の位置づけ。授業の一環か、課外の協力か、委託制作かで、謝礼の形も保険の扱いも変わる。無償の学習機会として組むなら、学生が得るもの(現場見学、作品の展示実績、講評)を具体的に書き出して、学校の側が教育上の説明をできる状態にしておく。

みっつ、品質と安全の基準。館内に吊る以上、落下しないこと、来店客の手が届く高さで角や針が出ていないこと、防炎の扱いが会場のルールに合っていることを、制作に入る前に基準として渡す。作品が上がってから「吊れません」と言うのは最悪の手戻りだ。

よっつ、回収品を素材に回す説明。客は「リユース・リサイクルのために出した」つもりで服を預けている。その一部が店の装飾になることを、回収の受付時に読める形で示しておく。ここを曖昧にすると、環境活動として出した物が販促物に転用されたという受け取り方をされうる。

エコフは回収と買い物を直結させている

この企画が成り立つ土台は、回収そのものに来店動機があることだ。エコフでは引き取り1点につき500円分の「エコフクーポン」を渡し、クーポンはレシート1枚につき税込5,500円の買い上げごとに1枚使える。公式サイトでは期間中お一人様1店舗9枚までという上限と、2026年12月31日という有効期限、発行店舗でのみ使えることが示されている。

数字で見ると性格がはっきりする。9点持ち込めばクーポンは4,500円分になるが、全部使うには税込49,500円の買い物が必要になる。値引きの原資はもちろん発生するが、1枚あたり税込5,500円という利用条件が、割引をそのまま返す形ではなく買い物の金額を段で引き上げる形に変えている。クローゼットの整理という行動に、来店と購買を接続した設計だ。回収そのものが集客施策として機能するので、回収実績が社内で説明できる数字になり、その実績を土台に装飾への活用という次の企画を立てやすくなる、という組み立てとして読める。

リユース・リサイクルの実務は株式会社JEPLANが担い、リサイクルプロジェクト「BRING」と連携している。どの国のどのショップでリユースされ、どこで何にリサイクルされるかを確認できる仕組みを作ったと公式サイトは説明しており、2025年度にどうしても循環できなかった残渣は667.7kgを産業廃棄物として処理したことまで公開している。

集めた量だけ出す発表と、残渣まで出す発表の差

環境を掲げた販促で自社の取り組みを外に出すとき、この事例から借りられるのは情報の出し方だ。エコフの公開情報は、集めた量、集めた物の行き先、使い切れなかった量の3つがそろっている。

集めた量だけを出す発表は多い。だが集めた量は活動の規模を示すだけで、環境負荷が減ったことを示さない。行き先を示すと、回収が処分に流れていないことを説明できる。そして使い切れなかった量を自分から出すと、残りの数字の信頼度が一段上がる。667.7kgという残渣の数字は、公開しなくても誰も気づかない類の情報だ。それを出していることが、319.4トンという数字を読む側の態度を変える。なお、用途別にどれだけ使われたかという内訳は公表されておらず、数値で出ているのは回収量と残渣量だけだ。

自社で同じ形を狙うなら、企画書の段階でこの3つをどこから取るかを決めておく。集めた量は自社で数えられる。行き先は委託先に報告を求める契約条項が必要になる。使い切れなかった量は、委託先が産業廃棄物として処理した実績を出せるかにかかる。この3つ目を取れる委託先かどうかが発表の質を決めるので、選定の段階で聞いておきたい。

松坂屋静岡店で参加するときの会期とクーポン条件

項目 内容
会期 2026年10月7日(水)~12日(月・祝)
会場 松坂屋静岡店 北館3階 特設会場
受付時間 午前10時~午後6時(最終日は午後5時閉場)
回収対象 不要になった衣料品、靴、バッグなど
特典 お引き取り1点につきエコフクーポン500円分を1枚
クーポン利用条件 レシート1枚につき税込5,500円の買い上げごとに1枚。発行店舗でのみ利用可
枚数上限 期間中お一人様1店舗9枚まで
クーポン有効期限 2026年12月31日(木)
学生による制作 静岡デザイン専門学校。10月7日に回収会場を見学
リサイクルパートナー 株式会社JEPLAN(リサイクルプロジェクト「BRING」と連携)

まとめ

この企画で先に効いているのは、装飾のアイデアよりも回収の側の設計だ。回収そのものに来店と購買の動機を付け、回収量を社内で説明できる数字にし、その数字を次の企画の土台にしている。装飾に回るのは集まった衣料の一部で、プロジェクト自体はこれから動く。展示を終えたオーナメントの行き先は公表されていない。

自社で同じ型を検討するなら、手順は次の通りだ。まず回収の受け皿を作る前に、集めた物を何に使うかを1つ決める。使い先が決まっていない回収は在庫になる。次に回収の対価を設計する。割引を渡すのか、クーポンに使用条件を付けて買い物の金額を上げるのかで、企画の評価指標が変わる。制作を外部に出すなら、著作権の利用範囲、対価と保険、品質・安全基準、回収品を素材に回すことの説明の4点を、素材を渡す前に合意する。最後に、集めた量・使われた先・使い切れなかった量の3つを出せる委託先を選ぶ。数字を3種類そろえられない体制で環境を掲げると、発表のたびに説明が苦しくなる。

参照元

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編集:食品ノベルティの窓口 編集部(株式会社Agriture)
農業×食のOEM窓口として、業界動向を編集部がまとめています。
最終更新:2026.10.06
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この記事を書いた人

小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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