2026年7月23日、顧客プラットフォームを手がけるAsobica(東京都品川区)が、販促キャンペーン基盤「coorum promotion」を正式にローンチした。フォームを立てて、抽選して、当選者に発送して解散——という単発運用に対し、応募者へマイページ・ポイント・バッジを持たせ、そのまま会員として抱え続ける構えを取る。先行導入企業として、金沢の菓子メーカー・北陸製菓と、広島を地盤とするスーパーマーケットのフレスタが名前を出している。応募データを取って終わりにしない、という発想自体は新しくない。ただ、キャンペーンの事務局機能とロイヤルティプログラムを同じ管理画面に入れたことは、販促担当が次に何を発注するかという判断に直接効いてくる。
coorum promotionが1つに束ねた3つの領域
リリースでの位置づけは、販促キャンペーンの企画・イベント管理・ロイヤルティプログラムを統合したプロモーション基盤である。特徴として挙がっているのは3点だ。1点目が応募者の会員化。マイページで自分の応募履歴を確認でき、ポイントとバッジでエンゲージメントを高めるとしている。2点目がデータの蓄積と分析効率で、応募者データはCSVでいつでもエクスポートでき、管理画面のダッシュボードで状況を確認し、AIを活用した分析や施策への展開につなげる。3点目が顧客層の特定で、ライト層からコアファン層までを切り分けて販促施策を当てる。
coorumシリーズには他にcoorum community、coorum research、coorum insightがあり、「一般消費者 → 見込み顧客 → リピート顧客 → ファン → 共創パートナー」という顧客サイクルの全域をカバーすると説明されている。promotionはその入口側を埋める役回りだ。料金は公表されていない。導入によってリピート率やLTVがどう動いたかという数値も、リリースにも報道にも出ていない。
キャンペーンツールとCRMの間に空いていた場所
レシート応募型のキャンペーンは、システムの選択肢自体はすでに厚い。レシート画像を読み取り、抽選し、当選通知を送るところまでは各社のパッケージが揃っている。手薄だったのはその先だった。キャンペーンが終わればデータはCSVとして手元に残るが、応募者はブランド側から見ると氏名と連絡先の並んだ表でしかない。次の施策では、また同じ人に一から応募してもらうことになる。
ノベルティの現場でも同じ構図が繰り返されている。レシート応募で当選枠を切って景品を配る施策は数多く走っており(ココナッツサブレ61周年×パペットスンスン|折りたたみテーブル320名のレシート応募ノベルティ設計)、購入額に応じて配布物を切り替える組み方も広く使われている(ChroNoiR8周年POP-UP、購入額連動ノベルティの設計)。応募や購入の瞬間には濃い情報が発生しているのに、それを次の企画へ渡す導線は用意されていないことが多い。Asobicaが今回、キャンペーンの入口に会員基盤をぶら下げたのは、この受け皿の不在を製品の輪郭にしたということだ。
公表されている事実と、公表されていない事実
この手のプロダクト発表は、書かれていないことを読むほうが実務では役に立つ。リリースと報道から確認できる範囲を並べると、次のようになる。
| 項目 | 公表内容 |
|---|---|
| 発表日時 | 2026年7月23日 13時00分(PR TIMES) |
| 提供元 | 株式会社Asobica(代表取締役社長 兼 CEO 今田孝哉/2017年9月設立/資本金1億円/東京都品川区西五反田) |
| サービス名 | coorum promotion(コーラムプロモーション) |
| 統合範囲 | 販促キャンペーンの企画、イベント管理、ロイヤルティプログラム |
| 会員化まわりの機能 | マイページ(応募履歴の確認)、ポイント、バッジ |
| データまわりの機能 | CSV出力、管理画面ダッシュボード、AIを活用した分析(「AIによるレポート・サマリー機能」はリリース中の先行導入企業コメントでの表記) |
| 外部連携 | LINE連携(当選案内などの自動化。リリース中の言及は先行導入企業のコメント内) |
| 先行導入 | 北陸製菓、株式会社フレスタ |
| 料金 | 非公表 |
| 効果指標(リピート率・LTV等) | 数値の公表なし |
効果の数字が出ていないのは、正式ローンチ直後という時期を考えれば自然だ。ただ、社内で稟議を通す側からすると、比較材料が機能一覧しかない状態でもある。
先行導入2社が口にした「困っていたこと」
北陸製菓で営業企画部広報を務める福田栞氏は、SNS上で顧客とやり取りはしてきたものの、「継続的に声を集めて分析することの難しさが課題」だったと述べている。同社の看板は1970年発売の揚げあられ「ビーバー」で、福田氏はファンが「ビーバーにどのような思い出や愛着を持ってくださっているのか」といった深い声を集める必要性に触れ、導入の理由として「お客様との接点をキャンペーンだけで終わらせず継続的なコミュニケーションにつなげられる点」を挙げた。今後は「お客様の声を商品づくりに反映できる取り組みを増やしていきたい」としている。
フレスタでマーケティング部に所属する正岡旺典氏の課題認識は、運用の現場寄りだ。「特にレシート画像の確認やLINEでの当選のご案内は属人化しやすく、担当者ごとに対応にばらつきが出る点が課題」と語り、評価点として「管理画面でキャンペーン運営全体を一元管理できる点や店舗ごとに当選者への案内を最適化できる点」を挙げている。複数店舗を抱える小売の事務局が、どこで消耗しているかがそのまま出た発言だ。
提供側の姿勢も報じられている。EnterpriseZineの記事では、Asobicaの渡辺翔太氏が「今後、coorumを拡充していく上では顧客データ基盤への投資も欠かせない」と述べている。機能を足す話ではなく、データをためる側に金を入れるという説明の順序になっている。
閾値・在庫・回遊を「2回目がある前提」で組み直す
ここからが販促担当にとっての本題になる。会員基盤がキャンペーンの下に入ると、ノベルティ側の設計変数が3つ、意味を変える。
閾値は「今回いくら買ったか」から「これまでいくら買ったか」へ
購入額連動のノベルティは、その回の会計額で線を引くのが普通だ。3,000円で1点、6,000円で2点、といった組み方になる。会員IDが継続すると、この線を累積で引く選択肢が生まれる。同じ1万円でも、1回で使った人と5回に分けて通った人では、翌月以降の見込みが違う。累積閾値は来店頻度を買う設計で、単回閾値は客単価を買う設計だ。どちらが正しいかは商材で変わるが、少なくとも今までは後者しか選べなかった。
在庫読みは初回では変わらない
会員化を導入すれば景品の必要数が読めるようになる、という期待は先走りだと考えたほうがいい。1回目のキャンペーンでは過去データがないので、読みの精度は従来と変わらない。効いてくるのは2回目からで、前回応募者のうち何割が戻ってきたかという再応募率が出て初めて、先着数の設定に根拠が乗る。会員基盤の投資回収は最短でも2サイクル目という前提で年間の販促計画を組まないと、初回の余剰在庫を見て「効果がなかった」という結論になりかねない。逆に言えば、年1回の周年施策だけを想定しているなら、この種の基盤は噛み合いにくい。
回遊は「店舗を回らせる」から「回った人を覚えておく」へ
複数拠点を歩かせるノベルティ施策は以前から成立している。2店舗を回ると特製タオルが手に入る形式などがその例だ(2店舗を回ると特製タオル、あみあみ秋葉原の周年回遊キャンペーン)。従来はスタンプが揃った時点で完了だったが、会員IDが残ると「どの店舗を、どの順で回ったか」が個人単位の履歴になる。正岡氏の言う店舗ごとの案内最適化は、この履歴を前提にした話だ。フレスタのように地域内で店舗が近接するチェーンでは、常連店と流入店の区別がついたところから、次のノベルティを店舗別に振り分ける余地が出てくる。
事務局の作業と、ノベルティ発注のロットが動く
運用面で先に効くのは、正岡氏が挙げた属人化の解消だ。レシートの目視確認と当選案内は、担当者の判断が入りやすく、繁忙期には処理そのものが滞る。管理画面での一元化とLINE連携の自動化は、この工数を削る方向に働く。先着配布と応募抽選を二段構えにし、告知や応募受付を外部ツールで併走させる運用はすでに珍しくないが、ツールが分かれている限りデータは分断されたままになる。
調達側への波及も見ておきたい。ライト層とコアファン層を分けて施策を当てるという建て付けを本気で取るなら、全員に同じノベルティを配る前提が崩れる。単一SKUを大量に刷る発注から、複数SKUを層別に少量ずつ、という発注に寄る。小ロット対応の可否や、後から追加分だけ増産できるかどうかが、これまで以上に選定条件に上がってくる。単価は上がる方向なので、層別化の粒度をどこまで細かくするかは、印刷ロットの下限と相談して決める話になる。
もう1つ、会員化は個人情報を継続的に預かることを意味する。キャンペーン応募のためだけに取った情報を、その後の会員向け施策や商品開発の分析にどこまで使うのか。ここは法務と早めにすり合わせて、応募フォームの同意文言の設計から入るべき領域だ。ツールを入れてから文言を後追いで直すと、初回の応募者だけ扱いが違う、という面倒な状態が残る。
導入検討に入る前に確かめること
| 確認項目 | 見るべき点 |
|---|---|
| サービス名/提供元 | coorum promotion(株式会社Asobica)。問い合わせ窓口はPR TIMES掲載のリリースを参照 |
| 提供開始 | 2026年7月23日に正式ローンチ |
| 料金 | 公表されていない。初期費用・月額・応募件数課金の別を個別に確認する |
| 実施頻度 | 年1回の単発なら効果が出にくい。年複数回の実施計画とセットで検討する |
| 連携範囲 | LINE連携は公表済み。既存の会員基盤やPOSとどう突き合わせるかは要確認 |
| データ出力 | CSVエクスポート可。解約時のデータ持ち出し条件を先に詰める |
| 同意設計 | 応募目的以外への利用範囲をフォームの文言に落とす。法務との事前確認が前提 |
| ノベルティ調達 | 層別配布を想定するなら、小ロット・追加増産に対応できるサプライヤーを並行して探す |
まとめ
coorum promotionが解こうとしているのは、応募データが施策ごとに切れてしまうという構造的な穴だ。機能の目新しさより、キャンペーン事務局とロイヤルティプログラムを同じ画面に置いたという設計判断のほうが実務に効く。一方で、料金も効果数値も公表されていない以上、他社事例で判断できる段階にはない。
販促担当が今できるのは、道具を選ぶ前の棚卸しだ。過去2年に実施したキャンペーンの応募者データが今どこにあり、誰が触れる状態か。同じ人が複数回応募していたかどうかを、今のデータで判定できるか。この2つに答えられないなら、基盤を入れても最初の1年は測定期間にしかならない。そのうえで、次の周年施策を「単発」ではなく「1回目」として企画書に書き直せるかどうか。そこが分かれ目になる。
参照元:PR TIMES(株式会社Asobica)/EnterpriseZine/北陸製菓(hokka)
最終更新:2026.07.28
