ローソンストア100が2026年8月5日から実施している「1個買うと1個もらえる!おトクなレシートクーポン」は、対象飲料を1個買うとレシートに無料引換券が1枚印字され、後日その券でもう1品が0円になる仕組みだ。今回はカゴメ・アサヒ・コカ・コーラの3社が同時に相乗りし、しかも「1会計につき無料券30枚まで発券可能」という上限が設けられている。値引きでも増量パックでもなく、レシート1枚に販促を載せるこの座組みは、販促・広報担当が自社施策を設計するときの材料が詰まっている。まずは公式告知の中身を、メーカー別に読み解く。
「私のフルーツ 330ml」が「トリプルケア 200ml」で無料になる、カゴメの容量アップ設計
カゴメの対象は「野菜一日 これ一本 トリプルケア 200ml」で、これを1個買うと「私のフルーツ これ一本(マルチビタミン/鉄分)330ml」の無料引換券が出る。買う側の内容量は200ml、引き換えでもらえる側は330ml。つまり本体より容量の大きい別ブランドを無料で試させる導線になっている。既存の「野菜一日 これ一本」ユーザーに、姉妹関係にあるフルーツ系の新顔を手に取らせる。買い慣れた棚から、まだ買っていない棚へ客を横移動させる作りだ。
green colaを買うと水、檸檬堂を買うと無糖 ― 引換品の狙いが逆を向く2社
アサヒとコカ・コーラは、同じ「1個買うと1個もらえる」でも引換品の性格が違う。アサヒは「green cola 500ml」を買うと「おいしい水 600ml」がもらえる。炭酸飲料を売りつつ、日常的にリピートが起きやすい水のブランドを刷り込む組み合わせだ。一方コカ・コーラは「よわない檸檬堂 350ml」を買うと「よわない檸檬堂 無糖」が引き換えられる。こちらは同一ブランド内で、フレーバー版から無糖版へ味の選択肢を広げにいく。片方は「別カテゴリーへの送客」、もう片方は「同ブランド内の横展開」で、無料引換の使い方が真逆になっている。
| メーカー | 買う商品 | もらえる引換品 | 設計の軸 |
|---|---|---|---|
| カゴメ | 野菜一日 これ一本 トリプルケア 200ml | 私のフルーツ これ一本 マルチビタミン/鉄分 330ml | 姉妹ブランドへ送客(容量は本体より大) |
| アサヒ | green cola 500ml | おいしい水 600ml | 炭酸→水、別カテゴリーへ送客 |
| コカ・コーラ | よわない檸檬堂 350ml | よわない檸檬堂 無糖 | 同ブランド内でフレーバー拡張 |
「1会計30枚まで」は、まとめ買いを歓迎しつつ1点あたりの持ち出しを閉じる上限
この施策でいちばん見落とされやすいのが「1会計につき無料券30枚まで発券可能」という一文だ。上限を30枚に置くと、買う側は1回の会計で最大30個まで対象商品をまとめ買いできる。1個1個の少量トライアルではなく、家庭やオフィスへのケース単位のまとめ買いを許容する数字だ。同時に、無料引換分はメーカーが負担するため、1会計あたりの無償提供数に天井をつけて原価を読める形にしている。「買い占めを止める」ためではなく、「まとめ買いは歓迎しつつ、1レシートあたりの持ち出しは確定させる」ための上限と読むほうが実態に近い。閾値の置き方ひとつで、客単価の伸ばし方と原価の管理を両立させている。
レシート印字型は、アプリ会員登録を挟まずに併売を成立させる
販促の受け皿としてアプリ会員限定・応募抽選型を選ぶ企業は多い。実際、「ちいかわ」×マツキヨココカラが税込1,000円で先着マルチケースを配る夏施策のように、アプリ会員登録と一定額の購入をトリガーにする設計は珍しくない。対してローソンストア100のレシートクーポンは、会員登録もアプリインストールも要らず、レジで対象商品を1個買った瞬間に券が出る。登録という一段のハードルを外した分、初回接触の数は増えやすい。ただし引換のために再来店が必要で、発券期間は8月11日まで、利用期間は8月18日までとずらしてある。無料券を配るだけでなく、もう一度店に来させて次の買い物を生む二段構えになっている。この「配って終わりにしない」考え方は、ノベルティ配布のタイミング戦略とも通じる。
販促担当がこの座組みから持ち帰れる、無料引換の組み立て3つ
自社で「1個買うと1個」型を検討するなら、今回の3社の作りから抜き出せる論点は次の3つだ。
- 引換品を「本体の下位互換」にしない:カゴメは本体200mlに対し引換品を330mlに設定し、もらう側に得を感じさせている。安い付属品を付けるより、送客したい商品を無料側に置く。
- 送客の向きを先に決める:別カテゴリーへ広げたいのか(アサヒの炭酸→水)、同ブランド内で選択肢を増やしたいのか(コカ・コーラの檸檬堂→無糖)で、引換品の選び方が変わる。
- 上限枚数は客単価と原価の両にらみで置く:30枚という数字は、まとめ買いを止めない一方で1会計の無償提供数を確定させる。閾値は「抑止」ではなく「設計」の道具になる。
ノベルティや引換キャンペーンを、単発の景品配布ではなく購買と再来店を動かす仕掛けとして組み直したい担当者は、プロモーション戦略の立て方ガイドもあわせて設計の下地にしてほしい。
飲料メーカーと小売の共同販促は、購買データを使った出し分けの実験も進んでいる。カゴメがトライアルと組んだクーポン配信では、購買履歴や売場位置に応じて割引額を変えた結果、一律配信よりも販促コストを7割削減できたと報じられている。今回のローソンストア100の一律発券型は、その対極にある「登録も会員データも要らない、レシート一枚で完結する併売」だ。どちらが正解かではなく、狙う客層と手持ちのデータで手法を選び分ける段階に来ている。
参照元
- ローソンストア100「1個買うと1個もらえる!おトクなレシートクーポン 8月5日(水)から8月11日(火)まで」https://store100.lawson.co.jp/newentry/topics/detail/1530712_5006.html
- Think with Google「トライアルとアサヒ飲料 ― 共同で流通の課題解決に取り組むために」https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/articles/omnichannel/asahiinryo/
- 日経クロストレンド「カゴメとトライアルがクーポン配信で大実験」https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/01064/
最終更新:2026.08.11
