おやつカンパニーが「8月2日はベビースターの日」を、たった1日のイベントで終わらせなかった。7月27日の東京ラーメンストリートでの限定メニューから、8月1日の東京駅特設ブース、そして9月18日開店のポップアップストアまで、およそ3カ月を1本の線でつないでいる。記念日を号砲にして、話題づくり・体験・物販を別々の日時と場所に配ったこの組み方は、自社の周年や記念日を持つ販促担当にとって、そのまま応用できる設計図になる。以下、公開されている日程と会場をもとに、各段階が何を担っているかを分解する。
8月2日を1日で終わらせず、7月27日から10月27日まで引っ張る三段構え
「ベビースターの日」は、社名の語呂合わせ(おや=8、つ=2)から生まれた記念日で、日本記念日協会にも登録されている。8月2日という1点は、放っておけば当日のSNS投稿で消費されて終わる。おやつカンパニーはこの1点の前後に、性格の違う2つの施策を置いた。
時系列で並べると、まず7月27日(月)から8月2日(日)まで、東京駅一番街地下1階の東京ラーメンストリート6店舗で限定コラボメニューを提供し、注文者に限定ステッカーを配る。記念日前日の8月1日(土)には、JR東海 東京駅イベントスペース(八重洲コンコース)で10時から20時までの1日限定ブースを開く。そして記念日が過ぎた9月18日(金)から10月27日(火)まで、同じ東京駅一番街の東京おかしランドでポップアップストア「ベビースターショップ」を営業する。
7月末・8月頭・9〜10月と、来店の理由を3回に分けている点が肝になる。1回の大型イベントに予算と人員を集中させる代わりに、話題化・体験・購買という機能ごとに日を割り、東京駅という同じ舞台で客を受け渡していく構造だ。
| 段階 | 時期 | 場所(すべて東京駅) | 仕掛け | 担う役割 |
|---|---|---|---|---|
| 第1段 | 7/27〜8/2 | 一番街地下1階 東京ラーメンストリート6店 | 限定メニュー+注文特典ステッカー | 話題化・回遊 |
| 第2段 | 8/1(1日限定) | 八重洲コンコース イベントスペース | 麺の壁フォトスポット・歴史展示 | 体験・拡散 |
| 第3段 | 9/18〜10/27 | 一番街地下1階 東京おかしランド | ポップアップストアで限定商品販売 | 購買 |
紙1枚の限定ステッカーが、味の違う6店舗を横につなぐ
第1段の主役は、東京ラーメンストリートの6店だ。塩らーめん専門 ひるがお、家系ラーメン 革新家 TOKYO、とんこつらーめん 俺式 純、東京煮干し らーめん玉、そらのいろ NIPPON、味噌麺処 花道庵。塩・家系・とんこつ・煮干し・鶏・味噌と、あえてジャンルの違う店を並べているのがわかる。
ここでベビースターのコラボメニューを頼むと、限定オリジナルステッカーが1枚もらえる。ステッカー自体は原価の低い紙モノだが、この配布には2つの狙いが読み取れる。ひとつは、SNSで写真が回りやすい「持ち帰れる証拠」を客の手に残すこと。もうひとつは、味の系統がばらけた6店に散らすことで、ラーメン好きが「別ジャンルもう1杯」と回遊する口実をつくることだ。1店だけで限定メニューを出せば単発の来店で終わるが、6店に分ければ、同じ地下フロアのなかで滞在時間と客単価を伸ばせる。
記念日ノベルティを回遊の導線に変える発想は、他社の施策とも重なる。たとえば2店舗を回ると特製タオルがもらえるあみあみ秋葉原の周年キャンペーンは、特典の受け取り条件そのものに「複数店を回る」を組み込んでいた。ベビースターの場合は条件を課さない緩い設計だが、味の違う6店を横に並べた時点で、フロア全体を1つの回遊エリアに見立てている点は共通している。
8月1日の「麺の壁」フォトスポットが拾うのは、ラーメンを食べない通行人
8月1日の特設ブースは、売り場ではない。八重洲コンコースのイベントスペースに、1959年の発売からの歴史展示と、ベビースターの麺で埋め尽くした壁を背景にキャラクターのホシオくんと撮影できるフォトスポットを置く。物を売らず、体験と撮影機会だけを差し出す1日だ。
この段は、第1段では拾えない層を狙っている。東京ラーメンストリートの限定メニューは、当然ながらラーメンを食べる人にしか届かない。一方、八重洲コンコースは新幹線の乗り換えで通る人が多く、その場で食事をしない通行人が大量にいる。麺の壁というフォトジェニックな仕掛けは、そうした「今日は食べないが写真は撮る」人にブランドを触らせ、投稿という形で拡散を担わせる。買わせるのではなく、話題を広げる係だ。
景品を配らずに体験で人を動かす手は、販促の現場で厚みを増している。梅田スカイビルが景品を配らずスタンプの重ね捺しで回遊させた事例と並べると、ベビースターのフォトスポットも「配布物ではなく、その場で完結する体験」で来場者の行動を設計している点で近い。物を渡さないぶん在庫や配布オペレーションの負担が軽く、1日限定でも回しやすい。
9月18日開店のベビースターショップが、夏の記憶を秋の売上に変える
記念日が過ぎた9月18日から10月27日まで、東京おかしランドで営業するポップアップストア「ベビースターショップ」が第3段だ。ここで初めて、はっきりと物販が前面に出る。カラフルベジビッツやベビースターチョコクランチといった限定商品を並べ、およそ40日間、店として売り続ける。
注目したいのは、購買の山を記念日当日にぶつけていないことだ。8月2日に物販を集中させれば、記念日の熱が高いうちに売れる一方、当日を過ぎれば熱は冷める。おやつカンパニーは逆に、7〜8月の話題化と体験でブランドへの接触を先に稼ぎ、その記憶が残っている9〜10月に物販の受け皿を開いた。夏に生まれた「見た・触った・撮った」を、秋の「買う」に時間差で回収する組み立てになっている。
物販段階に限定品と特典を重ねる型は、POP-UPで繰り返し使われてきた。そごう千葉で限定ステッカー特典を付けた横浜バニラのPOP UPのように、期間限定の売り場に「ここでしか買えない」を集めることで来店動機を立てる。ベビースターの場合は、その売り場を記念日の1カ月半後ろに置き、前段の話題化とセットで機能させている。
自社の記念日を面展開するとき、販促担当が先に決める3つの役割分担
この施策を、SNS上の声も交えて整理しておく。ラーメンファンからは「6店ぜんぶ回ってステッカーをコンプしたい」という反応が出ており、味の違う店を並べた回遊設計は狙いどおり刺さっている。一方、出張族からは「食べる時間はないけど壁の写真だけ撮った」という声もあり、フォトスポットが非飲食層をきちんと拾っていることがうかがえる。子ども連れの家庭からは「9月のショップで限定商品を買いたい」と、購買の予約が前倒しで発生していた。話題化・体験・購買のそれぞれが、狙った層から別々の反応を引き出している。
自社の周年や記念日を単発で終わらせないために、販促担当が着手前に決めておくべきは、次の3点だ。
- 記念日の当日を「販売のピーク」ではなく「話題化の起点」として使い、購買の山は少し後ろにずらせるか。
- 1つの会場・1回のイベントに集約せず、話題化・体験・購買を担う場面をそれぞれ用意できるか。ベビースターは同じ東京駅の中で3カ所に分けた。
- 各段のノベルティや仕掛けに「次の段へ送る」役割を持たせられるか。ステッカーは回遊の口実、フォトスポットは拡散の起点、限定商品は購買の受け皿として働いている。
おやつカンパニーの組み方が示すのは、記念日は「1日のお祭り」にも「3カ月の販促シーズン」にもできるという分岐だ。同じ予算でも、話題化から購買までの導線を先に描いておくかどうかで、1点の記念日が面に広がるかが決まる。自社の設立記念日や商品の発売周年を控えているなら、当日に何をやるかの前に、その前後の日程に何を置くかから設計してみたい。
参照した情報源
- PR EDGE — ベビースターの日 東京駅プロモーション
- グルメプレス — 2026年8月1日、東京駅がベビースターに染まる特別な1日
- 株式会社おやつカンパニー プレスリリース — 東京ラーメンストリート6店舗のコラボメニュー
- 雑学ネタ帳 — ベビースターの日(8月2日 記念日)
最終更新:2026.08.01
