ファミリーマートが2026年7月28日、東京宝塚劇場のペアチケットが当たるキャンペーンを始めた。目を引くのは景品より設計のほうだ。スタンプが貯まるのは弁当やお菓子を買ったときではなく、通販代金・税金・公共料金・ふるさと納税といった「支払い」をレジで済ませたとき。1件につき1個、レジでファミペイを提示するのが条件で、支払い自体は現金でもファミペイ決済でもかまわない。スタンプ付与は2027年1月11日まで、実に168日間続く。販促担当にとっては、「何を配るか」より「どの行動を習慣にさせるか」を先に決めた設計として、分解する値打ちがある。
スタンプ11個は支払い11回、ファミマは「買い物」でなく「支払う回数」を景品にした
チケット賞に応募するには、スタンプが11個いる。1回の支払いで1個だから、半年のあいだにファミマの店頭で11回、通販や税金や公共料金の支払いを済ませてもらう計算になる。ここが今回の肝だ。多くの購買キャンペーンは「◯円以上買ったら1口」と金額でハードルを引くが、ファミマは金額ではなく支払いの回数を数えている。電気代を毎月コンビニ払いにしている人なら、それだけで半年に6回。そこにネット通販の代引きや住民税の納付が数回乗れば、意識せずに11個に届く。買い物を増やさせるのではなく、もともとある支払いの動線をファミマとファミペイに寄せる——それが狙いの中心にある。
アプリを起点に来店の理由を作る発想は、他社の販促にも共通する。スギ薬局はアプリ限定の懸賞で800円ごとに応募口を積ませ、購買データをアプリ側にためる設計を採った。ファミマが積ませているのは購買額ではなく支払いという行動そのもの、という違いはあるが、どちらも「アプリを開かせ続けること」を最終目的に置いている点は同じだ。
収納代行は1件10円分の薄い商売、それでも半年チケットを賭ける理由
公共料金や税金の店頭払いは、コンビニにとって旨味の大きい商売ではない。収納代行は通常のファミペイ決済ボーナス(0.5%分)の対象外で、付与されるのは1件あたり10円分に固定されている。1回数百円の粗利にもならない業務を、宝塚のチケットまで用意して半年間押し出すのはなぜか。
答えは、支払いそのものではなくその先の来店頻度にある。税金や公共料金の納付は、毎月・数ヶ月に一度、必ず発生する固定の用事だ。この「絶対に生じる支払い」をファミマに固定できれば、月に何度かの確実な来店が生まれ、ついで買いのおにぎりやコーヒー、ファミペイのチャージ残高が乗ってくる。景品はチケット単体のコストでなく、半年ぶんの来店機会とアプリ起動を買うための投資と見たほうが実態に近い。1件10円の薄さは、裏を返せば「それでも回数で取り返せる」という読みの表れだ。
3個と11個の二層で、軽い応募者と常連を同じ動線に乗せる
景品は2種類あり、必要スタンプ数が大きく違う。手が届きやすいポイント賞と、狙いにいく必要のあるチケット賞を分け、参加の入口を二層にしている。
| 賞 | 必要スタンプ | 内容 | 当選(第1回) |
|---|---|---|---|
| ポイント賞 | 3個 | ファミマポイント5,000円相当 | 100名(全3回で計300名) |
| チケット賞 | 11個 | 東京宝塚劇場 S席ペア(星組『RRR × TAKA”R”AZUKA ~√Rama~』) | A・B・C各50組、計150組300名 |
3個なら支払い3回で届く。とりあえず参加してみようという層をこの低いハードルで拾い、応募という行動を一度踏ませる。そこからチケットの11個へ引き上げていく二段構えだ。同じ「段階を刻む」でも、栃木県のスタンプ企画は1個で全員・25個で5名まで景品を6段階に割った設計で、上に行くほど当選を絞って射幸心を煽った。ファミマは段階を2つに絞り、代わりに景品の格差(5,000円相当と宝塚S席)で引き上げの動機を作っている。刻みを増やすか、格差で引くか——自社の顧客がどちらに反応するかで設計は変わる。
168日を3回に割り、宝塚の演目替えで途中離脱を防ぐ
半年という長さは、放っておけば中だるみを生む。ファミマはスタンプ付与期間を1本に保ちつつ、応募のタイミングを3回に区切った。第1回が7月28日~9月21日、第2回が9月22日~11月16日、第3回が11月17日~2027年1月13日。応募期間ごとに用意される宝塚公演の演目が替わる予定で、「今回の演目には興味がなくても次は」という再挑戦の理由を仕込んでいる。
ロングランと期間分割の組み合わせ方は、業種を問わず応用が利く。ほっかほっか亭は8月の販促を盆・下旬・月末の3週に分けて短期集中で回した。こちらは1ヶ月を細かく刻んで来店の山を複数作る発想で、168日を大きく3つに割って飽きを散らすファミマとは逆方向だ。キャンペーンの寿命が1ヶ月なのか半年なのかで、区切りの粗さは変わる。長期なら演目やテーマの入れ替えで鮮度を、短期なら締切の連打で圧を——という使い分けになる。
販促担当が持ち帰れる、決済アプリを起点にした習慣化の作り方
今回の設計から抜き出せる要点は3つに整理できる。1つ目は、景品を「購買額」でなく「必ず発生する支払い」に紐づけたこと。固定費や納税のように顧客側に発生が約束されている行動を景品条件に選ぶと、こちらが売り込まなくても来店が積み上がる。2つ目は、低ハードルの賞と本命の賞を用意し、応募という最初の一歩を軽くしたこと。3つ目は、長い会期を区切って景品の中身を入れ替え、途中で熱が冷めない仕掛けを置いたことだ。
自社アプリや会員基盤を持つ企業なら、この3点はそのまま移植できる。ポイントは「新しく買わせる」より「すでにある行動をこちらの窓口に寄せる」ほうが、顧客の負担が軽く続きやすいという一点にある。SNSでは「電気代を払うだけでスタンプが増える」と歓迎する声がある一方、「11個は結局それなりに通わないと届かない」という冷静な受け止めも見られた。ハードルの置き方ひとつで熱量が変わるのは、自社で設計するときも同じだ。ファミマが半年かけて試しているのは、決済アプリを顧客との毎月の接点に変えられるか、という実験でもある。
参照した情報源
- 株式会社ファミリーマート — 通販代金や税金のお支払いにファミマのアプリでスタンプをためて応募すると抽選で『東京宝塚劇場ペアチケット』やファミマポイントが当たる!
- @Press — ファミリーマート ロングラン企画を7月28日(火)から開始
- ペイメントナビ — 通販代金・税金・公共料金の支払いで「ファミペイ」提示のキャンペーン
最終更新:2026.08.01
