不易糊工業株式会社(大阪府八尾市)とmizuiro株式会社(東京都中央区)が2026年9月24日、デンプンを主原料とするバイオスターチプラスチック素材を共同開発したと発表した(配信はmizuiro)。廃棄野菜・果物由来のアップサイクル原料は、素材の一部として活用される。提案先には文具・事務用品、生活雑貨・日用品、化粧品関連、ノベルティなどが挙がっている。
発表文は用途を特定の製品に絞らず、BtoBの受託成形品まで含めた汎用成形材料だと書いている。副題も「文具・生活雑貨からノベルティ・受託成形まで」という並べ方で、特定用途向けの特殊材料ではなく用途を横断して展開できる「素材プラットフォーム」と位置づけている。名入れ品を1品目だけ試すより、すでに外注している成形品ごと相談先として検討する読み方に向く。
ノベルティが用途に入っている一方で、発表されたのは製品ではなく素材だ。単価も最小ロットも納期も公表されていない。販促担当が今この発表から取り出せるのは、成形方法として何が使えるか、CO2の数字がどの条件で出たものか、そして社内で見積もりを取る段になって何を聞き足さなければならないか、この3点に絞られる。
射出成形とブロー成形で実績あり、展開先は容器・キャップ類から
発表文は成形について、汎用成形材料として設計したこと、射出成形・ブロー成形での成形実績があること、容器やキャップ類をはじめ文具・生活雑貨・ノベルティなど多様な製品形状への展開が可能であることを挙げている。想定用途の側では糊容器・キャップ・ケース類、トイレタリー用品、収納用品といった具体名まで出ており、既存の金型を持つケース類に載せられるかは、この列挙の範囲で当たりを付けることになる。素材の発表で成形方法にまったく触れないものと比べれば、相談の入口としては具体的だ。
ただし挙がっている形状は「展開が可能」という書き方で、成形実績としてどの製品をどの条件で成形したのかは書かれていない。金型の流用が可能かどうか、成形温度が既存のPP・PE向け設備の範囲に収まるのかは、サンプルを依頼する段で自社の設備条件と並べて聞く項目になる。
発表文が今後の展開として置いているのは募集だ。「本素材を活用した製品づくりに取り組む企業・パートナーを広く募集し、各社のニーズに応じた用途開発や成形方法の検討を進めていきます」という一文がある。成形方法の検討自体がこれから進める作業として書かれているわけで、既製品の名入れを頼むような発注の段階にはない。
CO2約34%削減は従来のPP・PE製品と比べた数字
環境数値として発表文が挙げているのは1つで、「PP・PE等を使用した従来製品と比べ、LCAに基づく試算で二酸化炭素排出量を約34%削減するデータが得られています」という書き方になっている。
比較対象が明示されている点は押さえておきたい。何と比べた34%なのか分からない環境訴求は少なくないが、この発表はPP・PE等を使用した従来製品という比較先を文中に置いている。自社の旧製品との比較ではなく、汎用樹脂の製品との比較だ。
一方で、LCAの算定範囲と検証者は非開示だ。原料調達から廃棄までのどこまでを含めた試算なのか、誰が算定して第三者が検証したのかまで踏み込むには、試算という語のまま受け取るしかない。この34%は条件の一式が非公開の試算値として扱うのが実際に近い。
販促物の告知にこの数字を転記するなら、比較対象を省略しないことと、自社が発注する製品の削減率ではないことの2点は外せない。素材について出た試算値を、自社のノベルティの削減率として書き換えるのは無理がある。
バイオマス50%以上はどこまで分かっているか
素材の構成について発表文が書いているのは、デンプンを主原料とすること、植物由来のバイオマス素材を「50%以上配合」すること、そこに廃棄野菜・果物の残さをアップサイクル原料として配合することの3点だ。50%が重量比なのか炭素比なのかは示されていない。バイオマス度の表示はどちらの基準で測るかによって数字が変わる。ここは推測で埋められる部分ではない。
デンプンが主原料であることは明記されているが、その原料植物がトウモロコシか馬鈴薯かといった別は書かれていない。アップサイクル原料についても発表文の表記は「野菜・果物の残さ」までで、品目名や調達元、配合比率は見積もり前に確認する項目になる。
配合率が公表されている製品と比べると、情報量の差がはっきりする。アイグッズの「SUS Sewing kit」は、ケース素材を麦わら60%・PP40%と数字で出し、最小ロット250個、カートン1,000個入りという発注条件まで併記していた(麦わら約60%配合、脱プラのエコソーイングキットをホテルへ)。あちらは配布物として買える段階にあり、こちらは素材として相談を受け付ける段階にある。同じ植物由来を配合したエコ素材でも、担当者が持てる情報の量が違う。
発表文で公表された項目と、見積もり前に聞き足す項目を分ける
発表文の記述を、公表されているものと書かれていないものに分けて並べた。
| 項目 | 発表文の記述 |
|---|---|
| 素材の呼び方 | バイオスターチプラスチック素材。商品名・登録商標の表記はない |
| 主原料 | デンプンを主原料とすると明記。原料植物(トウモロコシ・馬鈴薯など)の別は記載なし |
| バイオマス配合 | 植物由来のバイオマス素材を50%以上配合。重量比か炭素比かの明示はない |
| アップサイクル原料 | 廃棄野菜・果物の残さを素材の一部として活用。品目名・調達元・使用量・配合比率の記載はない |
| CO2削減 | PP・PE等を使用した従来製品と比べ、LCAに基づく試算で約34%削減。算定範囲と検証者の記載はない |
| 成形方法 | 射出成形・ブロー成形での成形実績あり。展開可能な形状として容器・キャップ類・文具・生活雑貨・ノベルティを挙げるが、成形実績品の具体名と成形条件の記載はない |
| 金型・成形温度 | 既存金型の流用可否、成形温度の範囲はいずれも記載なし |
| 想定用途・提案先 | 文具・事務用品/生活雑貨・日用品/化粧品関連/ノベルティ・企業オリジナル製品/BtoBの受託成形を含む製品・用途開発 |
| 両社の役割 | mizuiroがアップサイクル原料、不易糊工業が接着剤・文具・材料で培った開発・製造技術を持ち寄ったと記載。成形工程の担当は記載なし |
| 単価・最小ロット・納期 | 記載なし |
| 色・匂い・耐熱温度・食品接触の可否 | 記載なし |
| 受注・サンプル提供 | 記載なし。企業・パートナーを広く募集し、用途開発や成形方法の検討を進めるとしている |
表の下3行が発注実務に直接効く。既製品と同じ基準では比較できないため、想定数量の上限と下限、納品しなければならない日付、1個あたりの上限単価、収納する中身の実寸を自社で先に決めてから問い合わせるのが早い。価格も最低ロットも納期も公表しないまま別注の相談窓口だけを立てた例でも、同じ順序で整理されていた(価格もロットも書かない専用ページ、キラメックのフルオーダーバッグ)。数量と期日と予算の上限を自分で先に言えないと、成形方法の検討という段階の相談は前に進まない。
見積もり前に確認するのは、バイオマス50%以上が重量比か炭素比か、LCAの算定範囲、色の許容範囲、そして単価と最小ロットの目安だ。
色と匂いと耐熱は、サンプルを見るまで決まらない
販促物の企画では、色調、匂い、耐熱温度、食品接触の可否の4つが決まらないと告知文も配布シーンも固まらない。この4つは表のとおりサンプル段階で詰める項目になる。
デンプンを主原料に野菜・果物の残さを配合した樹脂で、コーポレートカラーどおりの発色が出るのかは発表文からは判断できない。廃材由来の成形品では、色の完全指定が通らない例がすでに出ている。廃ペットボトルキャップを砕いて再成形したキーホルダーでは、キャップの色を事前にある程度グループ分けできるものの成形時に混ざるため、色や模様を完全には指定できないと製品側が明記していた(唐津のNPOがMINI宮崎のオーナメントを砕きキーホルダーに再成形)。原料が単一の廃キャップでもそうなる。デンプンを主原料に野菜・果物の残さを配合した場合に色がどう出るのかは、サンプルを見るまで決められない。
匂いと耐熱も同じだ。文具・事務用品が提案先の先頭に挙がっているが、発表文が挙げる糊容器やキャップ、収納用品のように長く手元に置かれる配布物では、この2つは無視できない条件になる。食品接触の可否は、口に触れる形状を想定するなら確認が先に来る。
起点はMUIC Kansaiでの企業マッチング、募っているのは用途開発と成形方法の検討相手
両社が組んだきっかけとして発表文が挙げているのはMUIC Kansaiでのマッチングだ。発表文は同拠点を、万博レガシーの社会実装プラットフォームへの発展を目指した会員制のオープンイノベーション拠点と説明し、観光・インバウンド、環境、健康、食、エンタメなどをテーマに掲げていること、一般社団法人関西イノベーションセンター(MUFGおよび三菱UFJ銀行が設立)の情報を併記している。
発表文は、mizuiroが廃棄野菜・果物由来のアップサイクル原料、不易糊工業が接着剤・文具・材料で培った開発・製造技術を持ち寄ったと書いている。ただし成形工程をどちらが担うのかまでは書かれていない。
今後については、文具・事務用品など幅広い分野への提案、企業・パートナーの募集、用途開発、企業の未利用資源を活用した素材開発の推進が挙げられ、資源循環と脱炭素の両立を目指すとしている。自社に使い道のない野菜・果物の残さが出ている食品メーカーであれば、配布物の発注側としてではなく原料を持ち込む側として話が組める余地もある。持ち込める残さの品目や量の条件は、問い合わせで確認する項目に入る。
この発表の段階でできるのは、素材を前提に企画を組むことではなく、自社の用途・数量・期日・予算上限を書いた状態で問い合わせ、成形可能な形状と色の許容範囲、単価とロットの目安を聞き出すところまでだ。ノベルティは提案先の4番目に置かれているが、この段階で動かせるのは配布物の発注ではなく用途開発の相談だ。
参照元
最終更新:2026.09.24
