販促グッズの発注では、既製品への名入れと完全別注のあいだに、相談のしづらさという段差がある。株式会社KILAMEK(東京都新宿区)は2026年7月22日、自社が運営する「トートバッグのオリジナル印刷専門店」内に、フルオーダーバッグ専用のwebページを開設したと発表した。生地・サイズ・形状・印刷方法を指定して作る受注の入口を、独立した1ページとして切り出した格好になる。新商品の発表ではなく導線の追加で、価格・最低ロット・納期はいずれも公表されていない。発注側が読むべきは、書かれた部分よりも空欄のまま残された部分の方だ。
追加されたのは1ページ、変わったのは問い合わせの入り方
リリースで同社は、既製品にはないフルオーダーのバッグをもっと手軽に作りたいという要望に応えるため、初めての人でも製作を依頼できる専用WEBページを開設したと説明している。ページに並ぶ自由度は、サイズ指定、生地とカラーの選定、紐やファスナーなど細部パーツの追加、印刷方法の選択の4つ。同社は自社の強みを「スピード対応/専任スタッフによる提案力/柔軟な製作体制」と書いている。
動いたのは製造能力ではない。別注自体は以前から受けていたはずで、新しいのは別注の相談だけを切り出した着地ページができたことにある。既製品カタログの中に別注を混ぜて置くと、検索から来た担当者は単価の書いてある既製品へ流れていく。単価を書けない商材は、単価が書いてある商材と同じ棚に置かれた時点で選ばれにくい。棚を分けたというのが、この発表の実質だ。
縫う前に刷るという工程順が、締切の位置を変える
リリースの中で技術的に踏み込んでいるのは印刷まわりだった。既製品への名入れは商品ごとに印刷範囲の制限が設けられているのに対し、フルオーダーは生地を裁断・縫製する前に印刷するため、全面プリントや縫い目をまたぐデザインも可能だと書かれている。シルクスクリーンのほか、昇華転写と刺繍にも触れている。
この一文は、発注側のスケジュール表を書き換える力を持つ。既製品への名入れなら、版下の確定は納品直前でも間に合う。裁断前に刷る工程では、デザインの確定が生地の裁断より前に来る。デザイン締切が縫製工程より手前に固定されるという意味だ。社内でデザイン案が割れやすい案件ほど、この順序は効いてくる。裏返せば、総柄も縫い目をまたぐ絵柄も使わないのであれば、別注にする理由は薄い。
書かれた条件と、書かれなかった条件
リリースと特設ページを突き合わせると、公表されている条件はかなり偏っている。金額と数量にかかわる項目がほぼ空欄で、代わりに手続きの条件だけが細かい。
| 項目 | 公表されている内容 |
|---|---|
| 最低ロット | 記載なし。特設ページは「大ロットのノベルティグッズや物販、ショッピングバッグなどの制作に最適」とだけ書く |
| 単価・価格帯 | 記載なし。見積もり依頼後の個別回答 |
| 概算の返答速度 | 1営業日以内に概算価格を返答(特設ページ) |
| 納期 | 記載なし |
| 試作(校正品) | 量産前の試作品製作が可能。成形・製版を校正時に行うため、校正後の仕様変更やキャンセルは別途費用が発生(特設ページのQ&A) |
| 検針票などの書類 | 依頼内容によるが、提出は可能(特設ページのQ&A) |
| 生地の厚さ | 希望の生地色と製作内容により選定可能(特設ページのQ&A) |
目を留めたいのは試作の扱いだ。成形と製版を校正の段階で行うため、校正後の仕様変更やキャンセルには別途費用がかかると明記されている。試作品を見てから直すという進め方が、この商材では割高になる。仕様を凍結してから試作に入るのが前提の設計になっている。
語っているのが全部同じ会社という状態をどう扱うか
今回の発表に第三者が公にコメントした形跡は見当たらない。確認できる言葉は3か所にあり、いずれも同社が書いたものだった。
- リリース本文は「企業の販促品や物販品など、お客様の用途に合う、理想のフルオーダーバッグ製作をお手伝いいたします」と、用途を広く取った書き方をしている
- 特設ページの冒頭は「大ロットのノベルティグッズや物販、ショッピングバッグなどの制作に最適です」と、適した案件を大ロット側に寄せている
- 同店のトップページ表記では、プリント入りバッグを20枚から作れると掲げている(こちらは別注ではなく既製品プリントの条件)
同じ会社が、場所によって前提の異なる書き方をしている。矛盾というより、リリースは間口を広げる文、特設ページは案件を絞る文という役割の違いだろう。ただ発注側の実務では、この差が見積もり依頼の精度に直結する。何本からを大ロットと呼んでいるのかは、どこにも書かれていない。最初の打ち合わせで、この語の定義を数字に置き換えてもらうところから始めたい。
13の用途を並べた狙いを、稟議書の側から読む
リリースは活躍するシーンを13挙げている。展示会・商談会、販促キャンペーン、イベント・フェス、学校・教育機関、アパレルのショップバッグ、ライブ・コンサート、スポーツチーム、観光・地域PR、周年記念、社員向け・福利厚生、防災・啓発イベント、宿泊・観光施設、商品パッケージという並びだ。
読み物としては冗長に見えるが、単価を出せない商材の営業では機能する。別注の問い合わせは、担当者が自分のケースで頼めるのかを判断できないところで止まりやすい。13並べておけば、そのうちどれか1つに自分の案件が引っかかる確率が上がる。社員向け・福利厚生が用途に入っているのは、社内配布のグッズを外向けと別に組む会社が増えている流れ(従業員向けノベルティ(BtoE)市場が拡大中)と重なっている。
発注側に立つなら、この13のどれに自分の案件が当たるかを先に決めてから問い合わせた方が早い。用途が決まると必要な仕様が決まり、仕様が決まると概算が返ってくる速度が変わる。1営業日以内という約束は、こちらが仕様を言語化できている場合にだけ意味を持つ数字になる。
大ロット前提の別注は、単価より調達の前提を先に聞く
フルオーダーのバッグは、型代と製版代、それに輸送費が数量に乗る商材になる。海外調達の比率が高い販促品では、関税や為替の変動が仕入れ側の利幅を圧迫しているという調査も出ている(関税激化で販促品の調達コストが圧迫——PPAI調査で56%の企業がマージン課題と回答)。単価だけを他社と並べて比べるより、生地の調達先が国内か海外か、為替が動いたときに見積もりが再提示されるのかを先に聞いた方が、あとの差し戻しは減る。
展示会向けの発注なら、社内の意思決定の順番も先に組んでおきたい(販促EXPO春2026開催直前|ノベルティOEM発注を成功させる3つの準備)。裁断前に印刷する工程では、稟議が1週間遅れるとデザイン確定も1週間後ろへずれ、それがそのまま納品日に効く。
見積もり依頼フォームを開く前に埋める欄
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年7月22日 |
| 特設ページ | フルオーダーバッグ(トートバッグのオリジナル印刷専門店内) |
| 運営会社 | 株式会社KILAMEK(設立1999年4月/東京都新宿区左門町2-6 ワコービル7階) |
| 電話 | 03-3350-8215/特設ページ記載のフリーダイヤル 0120-17-5151 |
| 営業時間 | 平日9:00〜19:00、土曜10:00〜17:00、日曜・祝日休み |
| 見積もりの流れ | 見積もり依頼 → 1営業日以内に担当者から連絡 → デザイン入稿 → 支払・最終確認 → 入金確認後に製作・発送 |
| 選べる素材(サイト表記) | コットン・帆布/ポリエステル・ナイロン/不織布/麻・ジュート/PVCビニール・クリア/SDGs関連素材・エコリサイクル素材/タイベック/デニム |
| オプションの例 | ファスナー、ポケット、タグ、ボタン、収納袋、ゴムバンド、反射板、持ち手 |
| 問い合わせ | t.taguchi@kilamek.co.jp |
フォームを開く前に、社内で埋めておきたい欄が4つある。想定数量の上限と下限、納品しなければならない日付、1個あたりの上限単価、そして収納したい中身の実寸だ。最後の1つは軽く見られやすいが、フルオーダーの利点は中身に合わせて設計できるところにある。入れるものが決まっていない状態で相談すると、既製品を勧められて話が終わる。
まとめ
今回発表されたのはページ1枚で、取引条件は何ひとつ新しく公開されていない。だからこそ、この施策を自社で真似るなら、学ぶ対象は商品側ではなく導線側になる。単価を書けない商材を抱えているなら、単価の書ける商材と同じ棚から外し、専用の入口を作って概算までの日数を代わりに約束する。出せない数字を、別の数字で置き換えるという手だ。
発注側の次の一手は単純で、想定数量と納品日と用途の3点をメモに書き、それを添えて見積もりを依頼すること。特設ページは1営業日以内に概算を返すと書いている。その約束が実際に機能するかどうかは、こちらが仕様を出した瞬間から測れる。
参照元:PR TIMES(株式会社KILAMEK)/フルオーダーバッグ特設ページ/トートバッグのオリジナル印刷専門店
最終更新:2026.07.28
