ジョンソン・エンド・ジョンソンが、コンタクトレンズケア用品の購入者から総計200名に景品が当たる「最強定番 チョベリグキャンペーン」を、2026年7月27日から9月27日までウエルシアグループとスギ薬局で実施している(応募締切は9月30日)。景品はインスタントカメラのチェキ「instax mini 13」、ヘッドフォン、ファービーのグッズ。いずれも平成にヒットし、いまも名前の残る品ばかりだ。メーカーが自社ノベルティではなく他社の懐かし雑貨を景品にすえ、さらに「チョベリグ」という平成ギャル語をキャンペーン名に冠した。この一手には、消耗品のロングセラーをどう売り直すかという販促の勘所が詰まっている。販促担当が自社の周年商材や定番品を動かすときのヒントとして読み解いてみたい。
当選は総計200名、対象はコンプリート ダブルモイストとアキュビュー リバイタレンズ
まず事実を整理する。主催はメーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンで、売り場を貸すのはウエルシアグループとスギ薬局の2チェーン。対象は同社のコンタクトケア製品で、報道で名前が挙がっているのは1999年発売の「コンプリート ダブルモイスト」と「アキュビュー リバイタレンズ」だ。コンプリート ダブルモイストは、コンタクトレンズケア製品のなかで売上総容量が最も多いとされるロングセラーである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主催 | ジョンソン・エンド・ジョンソン(メーカー主導) |
| 実施チェーン | ウエルシアグループ/スギ薬局 |
| キャンペーン名 | 最強定番 チョベリグキャンペーン |
| 期間 | 2026年7月27日〜9月27日(応募締切9月30日) |
| 当選数 | 総計200名 |
| 景品 | チェキ「instax mini 13」/ヘッドフォン/ファービーのグッズ |
| 対象製品 | コンプリート ダブルモイスト、アキュビュー リバイタレンズ ほか |
注目したいのは当選数だ。総計200名は、購入者全体から見ればごく狭い枠になる。セブン‐イレブンでクオカードを1万名に即時還元した設計のように、当てやすさで来店動機を作るタイプとは逆を向いている。狙いは「当たるかもしれない」という広い期待ではなく、キャンペーンの世界観そのものを店頭とSNSで見せることに寄っている。景品数を絞る代わりに、景品と製品の組み合わせで語らせる設計だと読める。
景品に自社グッズを使わず、チェキとファービーの平成ヒット品を借りた
メーカーの懸賞なら、景品を自社ブランドの雑貨やオリジナルグッズで固めるのが素直なやり方だ。だがこのキャンペーンは、チェキ・ヘッドフォン・ファービーという、他社が生んだ平成のヒット品を景品に選んでいる。ここに設計上の判断がある。
コンタクトケア用品は、機能で語り出すと各社の説明が似通ってしまう領域だ。うるおい、洗浄力、消毒——どれも大事だが、それだけで景品を作ると製品パンフレットの延長になる。そこで景品を「1999年前後にコンタクトを使い始めた層が青春時代に触れた品」に振ることで、製品の機能ではなく、使い手の記憶のほうへ話題を移している。景品が製品の便益を説明するのではなく、購入者の世代を名指しする役目を担う構図だ。
景品の選び方で購買の空気を作る手つきは、メーカー販促でしばしば見られる。キリンが本搾りのレシート応募で景品を海鮮ギフトに切り替えた例も、飲料そのものではなく食卓の楽しみへ連想を広げていた。景品は製品の付録ではなく、製品をどんな気分で手に取ってほしいかを伝える媒介になりうる。J&Jの場合、その気分が「平成の懐かしさ」に設定されている。
製品の便益ではなく「1999年発売」という時代性を前に出している
キャンペーン名の「最強定番」と「チョベリグ」は、どちらも平成の言語だ。チョベリグは1990年代に流行した俗語で、「超ベリーグッド」を縮めた誉め言葉にあたる。この言葉が刺さるのは、ちょうどその時期に思春期を過ごした世代——いまの30代後半から40代である。コンタクトレンズを常用し、ケア用品を毎月買い替える層と、きれいに重なる。
製品側も、この物語に材料を提供している。コンプリートは1999年、つまり平成11年の発売だ。「長く売れている」という事実を、単なる信頼の証としてではなく、「あなたと同じ時代に生まれた製品」という共感の入り口に読み替えている。ロングセラーの弱点は、身近すぎて改めて手に取る理由が生まれにくいことだ。そこへ発売年の時代性を重ね、懐かしさを買い替えの合図に変えている。機能の説明を一段脇に置き、いつから使ってきたかという時間軸で製品を語り直した点が、この設計の芯にある。
メーカーが2チェーンに横串を通した、店舗アプリ主導とは異なる設計
実施の器がウエルシアグループとスギ薬局の2チェーンにまたがるのも、メーカー主導ならではだ。小売が単独で走らせる懸賞は、その店の会員やアプリの中で完結しやすい。実際、スギ薬局は同じ「チョベリグ」の名を冠しながら、アプリ限定で800円ごとに応募口を積む購買データ設計に寄せていた。金額の刻みで来店頻度と客単価を押し上げ、自社アプリに購買履歴をためる狙いが明確だった。
今回のメーカー版は、重心が違う。小売のアプリ会員を太らせることより、対象製品を複数チェーンの棚で同時に目立たせ、ブランド全体の想起を上げることに向いている。メーカーは店を横断して同じ世界観を敷けるぶん、購買データの蓄積という果実は小売側に委ね、自分は製品の再認知を取りに行く。同じキャラクター名でも、誰が主催するかで設計の重心がここまで動く。販促担当が他社事例を見るときは、キャンペーン名やキャラクターより、主催が小売かメーカーかを先に確かめると、狙いの読み違いを避けやすい。
売り場を持つ小売の受け止めも冷静だ。ある店頭運営の視点では、こうしたメーカー懸賞は「棚の前で足を止める理由を借りられる」利点がある一方、当選数が絞られるぶん、応募のしやすさで来店を増やす効果は限定的になる。だからこそ小売は、メーカー懸賞に自社アプリの応募動線やポイント施策を重ねて、来店データという自分の取り分を確保しにいく。SNS上でも「チョベリグって言葉、直撃する世代がちょうどコンタクト世代」という反応が見られ、言葉選びのターゲティングは概ね意図どおりに届いているようだ。
販促担当が持ち帰れる、ロングセラー消耗品の売り直しの型
このキャンペーンから、自社の周年商材や毎月買われる消耗品に応用できる筋道を三つ抜き出せる。
- 発売年を共感の入り口に使う:ロングセラーの「長く売れている」を信頼の証で終わらせず、「買い手と同じ時代に生まれた」という物語に読み替える。発売年に意味を持たせると、身近すぎて忘れられがちな定番品に、改めて手に取る理由が生まれる。
- 景品で世代を名指しする:景品を自社グッズに限定せず、ターゲット世代が青春期に触れた品へ広げる。景品が製品の付録ではなく、狙う客層への合図になる。
- 主催の立場で器を選ぶ:メーカーなら複数の売り場に横串を通して想起を上げ、小売ならアプリや金額刻みで購買データを取りに行く。同じ企画でも、自社が製品を売りたいのか来店データを取りたいのかで、器と条件の設計は変わる。
景品の豪華さや当選数の多さは、企画の良し悪しを決める指標ではない。誰に、いつの記憶で、どの製品を思い出してほしいか——その一本の線が通っているかどうかが、消耗品の売り直しでは効いてくる。J&Jのチョベリグキャンペーンは、その線を「平成」という一語で束ねてみせた。
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最終更新:2026.08.02
