キンコーズ・ジャパンが2026年7月27日、TBS主催の体験型SDGsイベント「地球を笑顔にする広場2026春」に出展したと発表した。親会社のコニカミノルタと共同で、トナー製造工程で生まれた未活用トナーを使ったアップサイクルクレヨンを持ち込み、来場した親子にメッセージカードを描いてもらうワークショップを開いたという内容だ。2日間で約400名が参加したとしている。販促担当者が読み取るべきは環境訴求の巧拙ではなく、自社工程から出た余り物を、配布物ではなく体験の道具に変換したという設計の順番のほうだ。手元の廃材で何かノベルティを作れないかと考えたことがある企業にとって、この出展は素材を決めるより先に決めるべきことを示している。
余ったトナーをCMYKの4色に組み替えた出展
リリースによると、キンコーズの同イベントへの参加は今回で3回目。今回は親会社であるコニカミノルタと共同で出展し、コニカミノルタのトナー製造工程で生まれる未活用トナーを活用したアップサイクルクレヨンと、キンコーズの印刷ノウハウを組み合わせたワークショップを展開したとしている。クレヨンは、トナー製造工程で発生するものの製品として活用されなかった未活用トナーを利用して生まれたアップサイクル品だと説明されている。どのような工程で顔料が固形の描画材になるのかまでは公表されていない。
ワークショップの中身は、印刷で使うCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色のクレヨンでオリジナルメッセージカードを制作するというもの。参加した子どもたちは4色を重ね合わせながら新しい色を生み出す体験を通じて、「色ができる仕組み」と「資源が新たな価値へ生まれ変わる循環の仕組み」を同時に学んだと同社は書いている。色数を4色に絞ったのは制約ではなく、印刷の原理をそのまま手のひらに落とし込むための選択だったことになる。
カードの用紙には、キンコーズが展開する地域循環型再生紙「おきあがみ」を採用。さらに同社は、過去の「地球を笑顔にする広場」で発生した紙ごみをトイレットペーパーへ再資源化する取り組みにも協力し、完成品はイベント内の景品として使われた。そのトイレットペーパーの外包には羽毛端材などの未利用素材を活用した環境配慮型用紙を採用したという。イベント前日には港区の小学生を対象とした校外学習にも協力している。会場ではTBSグループキャラクター「ワクティ」との連携もあったとしている。
配る物を主役から降ろすと、ノベルティの弱点がひとつ消える
来場者向けの記念品は、渡した瞬間が接触のピークになりやすい。受け取った側は袋に入れ、家に着く前に興味を失い、しばらくして処分する。販促グッズの効果を測る調査でも、捨てられずに残るかどうかが広告接触単価を左右する構造が指摘されており(ASI「2026年版広告接触効果調査」の5大知見)、配布数を積むほど成果が伸びるという前提はとうに崩れている。
今回の出展は、この弱点を素材の質ではなく役割の入れ替えで処理している。参加者が持ち帰るのはクレヨンではなく、自分が描いたメッセージカードだ。クレヨンは会場に残る道具として機能し、制作物だけが家庭に出ていく。自分の手が入った紙は、企業ロゴの入った既製品より捨てにくい。配布物のコストを一枚の紙にまで圧縮しながら、家庭内での二次露出はむしろ増える構図になっている。
もうひとつ効いているのが、資材の一貫性だ。描画材だけがアップサイクル品で台紙が普通紙なら、環境訴求はその場で疑われる。クレヨンが未活用トナー由来、カードが地域循環型再生紙、景品が過去イベントの紙ごみ由来、その外包まで未利用素材という並びは、突っ込みどころを先に潰す構成になっている。一点だけ環境素材を差し込んで全体を語る企画と比べたとき、説明に使う言葉の量が明確に少なくて済む。
公表されている数値と、資材まわりの確認できる仕様
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 参加者数 | 2日間で親子連れ中心に約400名 | キンコーズ・ジャパン リリース |
| 同イベントへの出展回数 | 今回で3回目 | 同上 |
| ワークショップの色数 | CMYKの4色 | 同上 |
| クレヨンの原料 | 製品として活用されなかった未活用トナー | 同上 |
| カード用紙 | 地域循環型再生紙「おきあがみ」 | 同上 |
| おきあがみの製造体制 | 中川製紙・中島商店・キンコーズの3社連携 | キンコーズ サービスページ |
| おきあがみの認定 | 石川県エコ・リサイクル製品認定/サステナブル★セレクション2025 三ツ星 | 同上 |
| 名称の公募 | 364件の応募から選定、青森県の麻倉遥さんの案を採用 | 同上 |
| キンコーズ従業員数 | 721名(2026年7月1日現在) | リリース内 会社概要 |
環境負荷の削減量やCO2換算値は公表されていない。削減効果を数字で語らず、参加人数と資材の由来だけを並べている点は、開示のしかたとしても素直だ。
各社が示している立場と、リリースが書いていないこと
この発表には個人名でのコメントが載っていない。誰かの談話として引用できる発言は含まれておらず、代わりに社としての説明が三つの層で置かれている。
ひとつめは主催側の位置づけだ。キンコーズは、トナーを生産するコニカミノルタと印刷・表現を担うキンコーズが連携することで、モノとコトの両面からアップサイクルの可能性を伝えることができたとまとめている。素材を持つ会社と、体験を組み立てる会社を分けて書いているのが特徴で、片方だけでは成立しない企画だという自己認識が読み取れる。
ふたつめは教育側の受け皿だ。イベント前日に港区の小学生の校外学習に協力したと記されているだけで、学校側や参加者の反応は公表されていない。ただ、同じ資材と運営体制を前日に学校向けへ一度使っている事実は、単発イベントの費用対効果を考えるうえで効いてくる。
三つめは用紙をめぐる第三者評価だ。「おきあがみ」は石川県のエコ・リサイクル製品として認定され、紙卸である中島商店も自社サイトで認定を告知している。プロジェクト自体は石川県内で回収した古紙を県内で製造加工する枠組みで、能登半島地震と豪雨の被災地域への義援金として売上の一部を寄付する設計だと説明されている。参加企業の側から見れば、資材の説明責任を自社で背負い込まずに済む構造になっている。
素材の量が参加人数の上限を決める、という逆算
ここからが、自社で真似できるかどうかの話になる。通常のノベルティ企画は、想定来場者数から配布数を決め、その数を発注する。廃材起点の企画は順番が逆で、確保できる素材の量が接触人数の天井を決める。未活用トナーは製造工程の副産物である以上、欲しいときに欲しいだけ増やせる性質のものではない。この制約を配布物で受けると「先着◯名で終了」という尻すぼみになるが、消耗品として会場に置けば、同じ量で桁違いの人数に触れられる。
クレヨン1セットは、何十人が順番に使っても減り方が緩やかだ。配布型なら1個=1人で終わる素材が、体験型では1個=数十人分の接触に化ける。約400名という参加規模を、限られた副産物で成立させるにはこの変換が要る。廃材が少量しか出ない企業ほど、配るより使わせるほうが理にかなう。
参加のハードルの置き方も配布型とは違う。小売の販促は「税込◯円以上の購入で先着」という金銭の閾値を置くが、この出展の閾値は時間だ。ブースに立ち寄り、数分を使って描く。金銭閾値がないぶん参加母数は増えるが、滞在時間という別のコストを払わせているので、通りすがりの受け取りだけの層は自然に外れる。体験型の販促は在庫の上限がそのまま話題の密度になりやすく、数量を絞った施策が短時間で完売した例もある(購入者特典ガチャ175個が約1時間で完売、岩槻朝顔市の体験型販促)。BtoBの展示会に移すなら、閾値を名刺交換やヒアリングシートの記入に置き換えればいい。
自社の廃材が同じ設計に乗るかどうかは、三つの条件で粗く判定できる。素手で扱っても安全か。毎回ほぼ同じ品質で出続けるか。由来を一文で説明できるか。トナーからクレヨンへという変換は、この三つを同時に満たしている。粉体や端材でも、安全性の確認に時間がかかるものや、ロットごとに色や質が変わるものは、来場者に触らせる用途には向かない。その場合は無理に体験化せず、什器や包材に回すほうが早い。
印刷会社が持ち出したのは商品ではなく工程だった
この出展で提供されたものを分解すると、物販でもサンプル配布でもなく、印刷という工程の原理そのものだ。CMYKの重ね合わせは印刷業の基礎であり、それを手で再現させることが、そのまま企業活動の説明になっている。パネルを立てて事業内容を読ませる必要がない。工程を持つ企業は、完成品より工程のほうが体験コンテンツになりやすい、という一般則がここに出ている。
素材の配合率や由来を訴求点にするノベルティは増えており、素材そのものを主役に据える売り方も定着しつつある(麦わら約60%配合、脱プラのエコソーイングキットをホテルへ)。ただ、配合率の訴求は数字の比較競争に入りやすく、より高い数値の競合が現れた時点で優位が消える。トナーを作る会社と印刷を担う会社が組んだ座組みは、他社が同じ素材を調達しても再現しにくい。
グループ内に素材の出し手と体験の作り手が揃っていた点は、外部連携のヒントにもなる。廃材はあるが運営経験のない製造業と、運営はできるが素材を持たない販促会社は市場に両方いる。共同出展にすれば、素材コストと運営コストを分け合いながら双方が自社の説明を届けられる。
発注前に押さえておく仕様と窓口
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| おきあがみ 用紙単価(薄め・80kg/㎡) | A4 11円/A3 22円/A3のび 33円 |
| おきあがみ 用紙単価(厚め・170kg/㎡) | A4 22円/A3 44円/A3のび 66円 |
| ポスター印刷 | A4 990円/A3 1,870円/A2 3,300円/A1 6,050円/A0 10,450円(厚め170kg/㎡のみ)。別途、出力基本料金(PDF入稿の場合660円)が加算される |
| ポスター対応店舗 | 田町店・大宮駅東口店・梅田店・伏見店の4店舗限定 |
| 用紙の取扱い | 全店舗。オンライン注文・店舗利用のいずれも可 |
| 想定用途 | チラシ、冊子、資料印刷、環境配慮ノベルティ、POP、販促用ポスター |
| 売上の一部 | 能登半島地震および豪雨被災地域への義援金として寄付 |
| キンコーズ・ジャパン 本社 | 東京都港区三田3-4-10 リーラヒジリザカ3階(設立1991年12月24日) |
| 報道・問い合わせ | 広報・サステナビリティ推進部 koho@kinkos.co.jp |
なお用紙単価とポスター印刷の価格は、公式サイト上で税込か税別かが明示されていない。社内で試算に使うなら、税基準をそろえたうえで見積もりを取り直したい。クレヨンの外販やワークショップの受託についてはリリースに記載がない。最小ロットや納期も公表されていないため、初回は少量の名刺やカードで用紙の質感を確かめ、そこから来場者用の枚数を詰めるのが現実的だろう。
まとめ:まず社内で「毎月出続けている余り」を数える
この事例から持ち帰れる手順は単純だ。第一に、自社の製造・物流・店舗運営で毎月安定して出ている副産物を洗い出し、月あたりの発生量を数える。第二に、その量を配布数ではなく参加人数に換算してみる。1個1人で終わる使い方と、道具として何十人に触らせる使い方では、同じ量で届く人数が変わる。第三に、参加の閾値を金銭ではなく時間や情報提供に置き換えられるかを検討する。展示会なら名刺、店舗ならアンケートでも成立する。
そのうえで、体験に使う資材を一種類だけ環境配慮品にする案は最初に捨てたほうがいい。今回の出展が説得力を持ったのは、クレヨンから紙、景品、その外包まで由来が揃っていたからだ。揃えられないなら、環境を主語にせず、工程の面白さを主語にする。自社の工程を来場者の手で再現させられないかという問いは、廃材の有無にかかわらず立てられる。
参照元:PR TIMES/キンコーズ・ジャパン/キンコーズ・ジャパン「おきあがみ」サービスページ/キンコーズ・ジャパン お知らせ/中島商店
最終更新:2026.07.28
