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景品を配らずに回遊させる——梅田スカイビル500円の重ね捺しスタンプ

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2026.07.28
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景品を配らずに回遊させる——梅田スカイビル500円の重ね捺しスタンプ

梅田スカイビルが2026年8月3日、館内を巡って1枚の絵を完成させる「重ね捺しスタンプ」の専用台紙を1枚500円(税込)で売り始める。運営する積水ハウス梅田オペレーションの発表によると、スタンプは全6版で、40階の空中庭 […]

梅田スカイビルが2026年8月3日、館内を巡って1枚の絵を完成させる「重ね捺しスタンプ」の専用台紙を1枚500円(税込)で売り始める。運営する積水ハウス梅田オペレーションの発表によると、スタンプは全6版で、40階の空中庭園展望台、39階フロア、地下1階の食堂街「滝見小路」などに置かれる。販促の世界では、回遊を促す仕掛けといえば台紙を無料で配り、全部集めた人に景品を渡すのが通り相場だった。今回はその順序が裏返っていて、景品を配らないかわりに回遊体験そのものへ値札が付いている。企業の販促担当が見るべきは絵柄ではなく、費用の向きが逆になった設計のほうだ。

目次

展望台で帰ってしまう客を、地下1階まで引っ張る

発表文は施策の狙いをかなり率直に書いている。梅田スカイビルは空中庭園展望台の印象が強く、39階フロアや地下1階の滝見小路にも見どころがあるのに、「展望台を訪れたあと、そのまま帰路につかれるお客様も少なくありません」と課題を認めた上で、スタンプを館内各所に散らしたと説明する。

台紙の販売場所は空中庭園展望台39階のチケットカウンター。購入した時点で1つ目のブルーのスタンプがすでに押されており、ゴール地点は地下1階の滝見小路だと発表文は書いている。昭和初期の大阪の街並みを再現した食堂街で、飲食店が並ぶ。展望台と地下街という性格の違う二つを一本の線でつなぐ、というのが発表の言い分だ。なお6版すべてを揃えるには空中庭園展望台への入場が必要で、大人の入場料は2,000円、4歳から小学生は500円と案内されている。終了日は今回の発表では告知されていない。

「重ね捺し」は6枠に並べるのではなく、1枠に6色を積む

ここを取り違えると設計の議論が全部ずれる。重ね捺しスタンプは、台紙に並んだ6つの枠へスタンプを1個ずつ押していく方式ではない。1枚の絵を色ごとに分版し、同じ場所へ順番に重ねて捺す方式だ。発表文も「色ごとに異なるスタンプを順番に重ねることで、美しい1枚のイラストが完成する」と書いている。シヤチハタも自社ページの見出しで「版画のように楽しむ 重ね捺しスタンプラリー」と掲げ、「スタンプを重ねて押していくことで、カラフルな一枚の作品に仕上がります」と説明している。押すたびに絵が少しずつ立ち上がっていく過程が体験の中身になる。

この方式には、通常のスタンプラリーにない技術的な制約が付いてくる。押す位置が数ミリずれれば色が食い違うため、同じ座標へ正確に落とすための固定ガイドが要る。シヤチハタの製品ページも「若干の版ズレが発生する場合」があると注記し、台紙には上質紙(四六判換算180kg)を推奨、インキの裏写りにも触れている。台紙を薄い紙にできないのは、この方式を検討する側が最初に直面する条件になる。同社の場合、対応インキは全15色で最小3版から申し込める。梅田スカイビルの全6版は、その最小構成の倍の版数を積んでいることになる。

無料配布型と並べると、費用の出どころが逆になる

同じ重ね捺し形式でも、事業者によって台紙の扱いはきれいに割れている。直近で実施された3件を並べると差がはっきりする。

施策 台紙 スタンプ数・地点 完走時の景品 期間
梅田スカイビル 重ね捺しスタンプ 500円(税込)で販売 全6版・館内複数フロア 告知なし(台紙そのものが完成品) 2026年8月3日〜(終了日の告知なし)
JR東日本 重ねてつなぐ、鉄道アートラリー 各駅の改札窓口で無料配布 全8種・7駅+イベント会場 オリジナル駅名トレインタグ全7種 2026年1月13日〜3月29日
近江鉄道・信楽高原鐵道 重ね捺しスタンプラリー 無料(乗車券を提示して受取) 5駅 「景品はございません」と明記 2025年4月26日〜8月31日

JR東日本の型では、完走者が増えるほどトレインタグの引き換えが進み、費用が積み上がる。参加が伸びることと原価が膨らむことが同じ方向を向いている。近江鉄道・信楽高原鐵道の型は景品を置かず、台紙も無料にして、完成した絵だけを持ち帰ってもらう。費用は台紙の印刷と設置に固定される。

梅田スカイビルの型は三つ目の解で、参加が増えるほど収入が増える。500円は空中庭園展望台の大人入場料2,000円のちょうど4分の1にあたり、入場を決めた客に追加で提案する価格としては、財布を開き直させない範囲に置かれている。

同じ仕組みを採った事業者が、それぞれ別の答えを出している

供給側のシヤチハタは、スタンプラリーが使われる場として商店街、テーマパーク、鉄道会社、道の駅、公共施設、各種イベントを挙げている。回遊を作りたい主体であれば業種を問わないという整理で、重ね捺しはその中の一形式として置かれている。台紙を売るのか配るのかまでは製品側では決めていない。

実施側の意図は事業者ごとに違う。JR東日本大宮支社浦和統括センターは7駅を横断する回遊に景品を組み合わせ、鉄道利用そのものを増やす方向へ振った。近江鉄道と信楽高原鐵道は台紙の受け取りに乗車券の提示を条件として置き、景品はないと最初から告知した。乗ってもらうことが目的なら、そこから先に景品を積む必要はないという判断になる。

梅田スカイビル側の説明はさらに別の角度から入っている。発表文は「スマートフォンで手軽に写真を残せる時代だからこそ、その場所でしか体験できない『手元に残る思い出』の価値が見直されています」とし、台紙には館内の特徴的なスポットやモチーフが描き込まれていて、実際の風景と見比べられるとも書いた。台紙を景品の受け皿ではなく、それ自体が持ち帰る記念品だと位置づけている。

真似るなら、完走地点に売り場があるかを先に確かめる

自社で再現できるかを考えるとき、最初に見るべきは絵柄でも価格でもなく、ゴールの置き場所だ。梅田スカイビルは完走地点を飲食店が並ぶ滝見小路に置いた。完走した瞬間に客が立っている場所が、そのまま消費が起きる場所になっている。JR東日本の型では完走地点が改札窓口で、そこで景品を渡して終わる。この一点だけで、施策が費用側に立つか収入側に立つかが決まる。

次に費用の輪郭を見ておきたい。梅田スカイビルがどの製品を採用したかは公表されていないが、シヤチハタが公開している価格を当てはめると規模感がつかめる。

費目 単価(税別) 6版・6地点で積むと
角型印65100号(65×100mm) 16,500円 99,000円
専用ガイド(同じ位置へ捺すための固定具) 14,400円 86,400円
印面デザイン・分版代 160,000円 160,000円
合計 345,400円

台紙の印刷費、インキの補充、設置と回収の人件費はこれに含まれない。それでも税別34万5,400円という初期費用は税込に直すと約38万円で、500円(税込)の台紙で割り戻せば760枚前後が損益の分かれ目の目安になる。年間の来館規模がある施設なら、そこは超えられる水準だ。逆にいえば、その枚数を売り切れる母数がない場所で有料台紙を出すと、無料で配ったほうが安い。

有料にすることで在庫の性格も変わる。景品を配る型は、品目ごとにロットと納期と保管場所を抱え、作りすぎれば余り、足りなければ現場で断ることになる。岩槻朝顔市の購入者特典ガチャが約1時間で175個を出し切った事例(購入者特典ガチャ175個が約1時間で完売、岩槻朝顔市の体験型販促)のように、体験型の景品は当たれば早く消える反面、読み違えたときの振れ幅も大きい。台紙一種類に絞れば、管理対象は紙が1点になり、刷りすぎたときの損も小さい。

回遊の閾値設計も別物になる。無料型は参加のハードルが低いぶん、途中で離脱した人の台紙と、渡せなかった景品の在庫が残る。有料型は500円を払った時点で回収が済んでいるので、完走率は原価計算にほとんど効かない。2店舗を回ると特製タオルを渡すあみあみ秋葉原の周年施策(2店舗を回ると特製タオル、あみあみ秋葉原の周年回遊キャンペーン)のような形と比べると、事業者が背負うリスクの向きがはっきり反対を向いているのがわかる。

ひとつ注意しておくと、無料で配る景品と、代金を受け取って売る商品では、社内での稟議の通し方も会計上の扱いも変わる。景品規制との関係をどう整理するかは案件ごとに条件が違うので、ここで一般化した結論を置くのは避けたい。設計の意図として押さえておきたいのは、この施策が景品という枠組みを使わずに回遊を成立させている、という一点になる。

景品を前提にしない販促が、ノベルティ発注に効いてくる場所

この形式が広がると、発注側の要件定義が変わる。求められるのは「もらって嬉しい物」ではなく、「客が自分の手で完成させられる未完成の物」になる。台紙は配布時点では絵が入っていない紙で、価値は客の移動によって後から乗る。ノベルティの原価を下げつつ体験価値を上げる方向としては、筋が通っている。

保持率の面でも分がある。PPAIが約5,000人を対象に行った調査は、もらったノベルティが捨てられずに残る条件を整理している(PPAI調査:5,000人データで判明 — ノベルティ「もらっても捨てる」を防ぐ3つの条件とは)。自分で6回押して仕上げた紙は、渡されただけの記念品より捨てにくい、という仮説は立てられる。ただし梅田スカイビルの施策はまだ販売開始前で、実際の完走率も持ち帰り後の扱いも、現時点では検証されていない。

もう一点、訪日客への売り方として見たときの筋の良さがある。発表文は国内の客に加えて訪日観光客にも大阪観光の思い出として楽しんでもらえるコンテンツだとしている。言語の説明を必要としない体験で、手荷物としてもかさばらない。ここは物販ノベルティが不利になりがちな条件を、紙一枚で回避している。

実施概要と、行く前に確認しておきたいこと

項目 内容
名称 重ね捺しスタンプ(梅田スカイビル)
販売開始日 2026年8月3日(月)/終了日は発表されていない
販売価格 500円(税込)
販売場所 空中庭園展望台 39階 チケットカウンター
スタンプ数 全6版
設置場所 40階 空中庭園展望台/39階フロア/地下1階 滝見小路 ほか
完成条件 6版すべてを同じ位置へ重ねて捺す。全スタンプを集めるには空中庭園展望台への入場が必要
空中庭園展望台 入場料 大人2,000円/4歳〜小学生500円/4歳未満無料
展望台の営業時間 9:30〜22:30(最終入場22:00)
主催 積水ハウス梅田オペレーション株式会社

視察に行くなら、押す位置を合わせるガイドの形状、スタンプ台の設置高さ、混雑時に列がどう伸びるかを見ておきたい。重ね捺しは1人あたりの滞在秒数が通常のスタンプより長くなるため、設置場所の動線幅が実務上の制約になる。

まとめ

梅田スカイビルの施策は、回遊を促すための費用を事業者が負担するのではなく、体験の対価として客から受け取る形に組み替えた。成立させている条件は三つある。館内に性格の違うフロアが複数あること、完走地点が消費の起きる場所であること、そして初期費用を回収できる来館母数があること。

自社で検討するなら、まず自分の施設や店舗網でこの三条件が揃うかを紙に書き出してみたい。揃わないなら無料配布のほうが合理的で、無理に有料化しても台紙が売れ残る。揃うなら、次に決めるのは価格ではなく完走地点をどこに置くかになる。8月3日以降、現地で列の長さと台紙を持って歩く客の動きを実際に確かめれば、自社の企画書に落とせる材料が拾えるはずだ。

参照元:PR TIMES(積水ハウス梅田オペレーション)梅田スカイビル・空中庭園展望台 公式JREメディア近江鉄道シヤチハタ 重ね捺しスタンプラリーシヤチハタ スタンプラリー 導入事例

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編集:食品ノベルティの窓口 編集部(株式会社Agriture)
農業×食のOEM窓口として、業界動向を編集部がまとめています。
最終更新:2026.07.28
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この記事を書いた人

小島 怜 Agriture CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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