脱プラで包装紙を紙に替えたとき、最初に出てくる心配は水だ。大阪市西区の印刷会社・株式会社高速オフセット(代表取締役社長:島田智)が、包装紙に使う14種類の用紙へ実際に水を垂らし、1分から60分までの吸い方を比べた結果を、2026年9月25日14時10分にプレスリリースとして公開した。あわせて、包装紙の印刷を検討する企業向けに環境対応用紙6種の無料サンプル郵送の受け付けも案内している。販促物やギフトの外装を紙に切り替える立場から読むと、この実験は「どの紙なら雨と結露に持ちこたえるか」を具体的な銘柄名で示してくれる材料になる。
大阪の印刷会社が包装紙14種に水を垂らし、60分の経過を写真で公開した
スポイトで50×50mmの紙に1滴、1分から60分まで5回観察した
手順は素朴だ。紙コップに水を入れ、スポイトで吸い上げた水を50×50mmに切った用紙へ垂らす。観察は1分・5分・15分・30分・60分の5回。用紙は耐水・機能紙(プラレスペーパーCoC 80g/㎡、プラレスペーパーNC 60g/㎡、OKレインガード 64g/㎡、ユポ紙 150μm、LIMEX 150μm)、一般印刷用紙(上質紙 64g/㎡、マット紙 81.5g/㎡、コート紙 84.9g/㎡)、ファンシー・特殊紙(クラシコトレーシング-FS 95g/㎡、タブロ-FS 54g/㎡、バナナペーパーCoC 55g/㎡、小豆殻CoC 60g/㎡、おきあがみ 80g/㎡)、包装用紙(タイオウアトラス=未晒クラフト紙 50g/㎡)の4系統14種である。50×50mmという寸法はリリースになく、同社サイトの実験コラム側にある。実験コラム自体の掲載日は2026年8月17日で、9月25日のリリースは結果の告知とサンプル郵送の案内にあたる。
60分でも変化が小さかったのは耐水紙と合成紙、そして混抄紙の一部
同社は結果を、耐水・機能紙系、ユポやLIMEXといった特殊素材、梱包資材用紙として使われるタイオウアトラスで高い耐水性が確認できた、とまとめている。意外だったのは木材パルプ以外の繊維を混ぜた混抄紙の粘り強さで、バナナの茎繊維を使うバナナペーパーCoCと小豆の殻を使う小豆殻CoCは、耐水用紙として作られたものではないのに60分時点で大きな変化が出ていない。耐水性と環境訴求を同じ1枚に乗せたい場合、選択肢は耐水紙だけではない。
| 系統 | 用紙 | 実験で記録された経過 |
|---|---|---|
| 耐水・機能紙 | プラレスペーパーCoC/NC、OKレインガード | 60分の段階で大きな変化なし |
| 特殊素材 | ユポ紙、LIMEX | 60分の段階で大きな変化なし |
| 混抄紙 | バナナペーパーCoC、小豆殻CoC | 5分時点で吸い込まず、60分でも大きな変化なし |
| 包装用紙 | タイオウアトラス(未晒クラフト紙) | 結果まとめで耐水性が強いと評価 |
| 一般印刷用紙 | 上質紙、マット紙、コート紙 | 5分で吸い始め、30分でほとんど吸収、60分で乾き始め |
| 古紙配合 | タブロ-FS、おきあがみ | 直後から吸い始め、15分で乾き始め、30分で完全に乾いてシワ |
| トレーシング系 | クラシコトレーシング-FS | 5分時点で吸い込まず、30分で水の当たった部分にシワ |
古紙を配合した紙は先に吸って先に乾き、乾いた跡にシワが残った
上質・マット・コートは5分で吸い始め、30分でほとんど吸った
販促物でよく使う上質紙・マット紙・コート紙は、5分で吸い始め、30分にはほとんど吸い込み、60分で乾き始めている。名入れの見栄えを基準に紙を選ぶと、この3種のどれかに落ち着きやすい。店頭で袋に入れて渡すだけなら問題は起きにくいが、来場者が自転車やベビーカーで持ち帰る前提なら、同じ紙を屋外の配布に流用しない判断が要る。
早く乾く紙は、乾いた後の見た目で評価が決まる
古紙を配合したタブロ-FSとおきあがみは、垂らした直後から吸い始め、15分で吸い切って乾き始め、30分には完全に乾いた。乾きが早いのは古紙の性質だが、乾いた後にシワが出る。受け取った人が見るのは濡れた瞬間ではなく家に着いた後の1枚なので、「乾くから平気」とは言いにくい。クラシコトレーシング-FSも吸い込み量は少ないまま、水が当たった部分だけシワが出ている。
屋外配布と生鮮ギフトで、紙に切り替えた瞬間に出る不具合
雨と結露は、渡す場所と持ち帰り時間で決まる
用紙の耐水性が効くかどうかは、紙そのものより配布設計で決まる。店頭で渡して客が5分で帰る施策と、屋外イベントで渡して数時間持ち歩く施策では、必要な水準がまるで違う。サロモンが本番の40日前から全国107店で配ったノベルティのように店頭を起点にする設計なら一般印刷用紙でも収まるが、会場で手渡す配布物や、冷蔵品・生花を包む用途では耐水側に振る必要が出てくる。結露は雨と違って屋内でも起きるため、天気予報では管理できない。
環境訴求の紙と耐水性は、同じ1枚で両立しないことがある
環境対応をうたう用紙のうち、古紙配合のものは吸水が早いという結果が出た一方、混抄紙は水にある程度耐えた。素材のストーリーを前面に出す販促では、アークテリクスが車内広告を切らずにサックへ縫い直した企画のように、素材の由来そのものが企画の中身になる。ただし由来が強い素材ほど物性は普通の紙と違う。先に用途の水濡れ条件を決め、そのうえで語れる素材を選ぶ順番のほうが後戻りが少ない。バナナペーパーはザンビアのバナナ茎繊維を使うフェアトレード紙、小豆殻CoCは廃棄される小豆の殻、おきあがみは古紙100%のFSC認証紙だと同社は説明している。
無料サンプルは法人限定で、届く絵柄はランダムになる
会社名・部署・会社メールが必須で、個人名だけでは届かない
ここが、リリースだけ読んでいると取りこぼす部分だ。6種セットの申し込みページには、同社で印刷を希望する企業が対象であること、法人向けサービスで個人の印刷は受けないこと、届く絵柄はランダムであること、個人名のみの記載では郵送を断る場合があること、郵送は日本国内のみであること、同業他社からの依頼は断る場合があることが並んでいる。入力欄も会社名・部署名・氏名・ふりがな・メールアドレス・電話番号・住所・見積り区分がすべて必須で、メールはフリーメールではなく会社のアドレスを求めている。社内の誰が申し込むかを決めずに動くと止まる。
6種セットの中身がリリースと申込ページで一部食い違う
セット内容も突き合わせておきたい。リリースは新聞風用紙としてタブロ-FSを挙げているが、申し込みページ側は更紙と書いている。申し込みページには用紙は情勢により変更する場合があるという注記もあるため、特定の銘柄を見たい場合は申し込み時に銘柄名で指定するのが確実だ。サンプル請求は無料だが、平日9時から17時の営業日に郵送手配で、到着まで2日から7日程度かかる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 同社で印刷を希望する企業。法人向けで個人は対象外 |
| セット内容 | 未晒クラフト紙/上質紙/おきあがみ/耐水紙/バナナペーパー+1種(申込ページは更紙、リリースは新聞風用紙タブロ-FS) |
| 必須入力 | 会社名・部署名・氏名・ふりがな・会社メール・電話・住所・見積り区分 |
| 絵柄 | ランダム |
| 郵送範囲 | 日本国内のみ |
| 所要 | 平日9:00〜17:00に手配、到着まで2〜7日程度 |
| 問い合わせ | 大阪市西区北堀江2-5-24 KOUSOKU堀江ビル(本社) |
食品を包むなら、耐水性より先に確認しておく制度がある
直接触れる容器包装は2025年5月末で経過措置が終わった
今回の実験は包装紙の水の吸い方を見たもので、食品に直接触れる用途の可否を判定したものではない。食品用の器具・容器包装には、安全性を評価した物質だけを使えるポジティブリスト制度があり、2020年6月1日の施行後に置かれた経過措置は2025年5月31日で終わっている。食品衛生基準行政は2024年4月1日に厚生労働省から消費者庁へ移っており、照会先も変わった。包装紙が中身に直接当たるのか、袋やトレーの外側にとどまるのかで話が変わるので、用途を確定させてから印刷会社に伝えたい。
古紙を使う場合は再生紙の指針とQ&Aが別にある
古紙側にも別の論点がある。食品用器具・容器包装への古紙の使用についてはQ&Aが、再生紙の使用については指針が出ている。古紙配合紙は今回の実験で吸水が早かったうえ、食品に触れる使い方ではこの整理も踏まえることになる。心斎橋の3施設が先着600名にキャンディを配った施策のように菓子を配る企画なら、無償で渡す場合でも食品表示は必要になるため、包装紙に表示欄を作るのか別のラベルを貼るのかを設計段階で決めておくほうが安全だ。
包む対象と配る場所を1枚に書いてから紙を選ぶ
紙の候補から入ると、耐水紙か古紙かの二択に見えて選べなくなる。順番を逆にして、包む中身(生花・冷蔵品・菓子・雑貨)、渡す場所(店頭・屋外・イベント会場)、持ち帰り時間、食品に触れるかどうかの4行を先に埋めると、必要な耐水水準がほぼ決まる。次の一手として、その4行を書いた紙を持って高速オフセットの6種セットを請求し、届いた用紙に自分で水を1滴垂らして確かめるのが早い。同社も自分で耐水性を検証してほしいと案内している。ロットや原価の話は、水濡れで配布物が使えなくなる可能性を潰した後で詰めたほうが手戻りが小さい。
参照元
- 高速オフセット プレスリリース(2026年9月25日)
- 高速オフセット「水に強い包装紙印刷のおすすめ用紙は?14種類で耐水性を比較実験してみた」
- 高速オフセット「6種類の包装紙サンプル郵送」申し込みページ
- 厚生労働省「器具・容器包装、おもちゃ、洗浄剤に関する情報」
- 厚生労働省「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年6月1日以降)」
最終更新:2026.09.26
