日本テクノ株式会社が2026年9月28日、「エコカレンダー2027」に載せるキャッチコピーの採用12作品を発表した。2025年12月1日から2026年5月28日までの約半年間に7,712人から33,361作品が集まり、そこから12点。採用作品にはアートディレクターの福士昌明さんが描き下ろしたイラストが添えられ、完成したカレンダーは応募した人全員に11月下旬から順次送られる。2007年に始まって21回目になる。
電気の保安管理と電力コンサルティングを本業とする会社が、カレンダーという昔ながらの販促物を21年も続けている。しかも応募者は3年連続で増えている。ここで効いているのは紙の質でもデザインでもなく、受け取る人を先に「応募者」にしてしまう順番のほうだ。ノベルティを配る物ではなく参加させる企画として組むと、開封率も保管期間も別の数字になる。以下、発注する側が自社で組み直せる形に分解していく。
33,361作品から12点、発表までに半年と4か月かかっている
発表された12作品は、1月の「帰り道 色んな顔の 雪だるま」から12月の「冬だ、こたつだ、秘密基地だ!」まで、月ごとに1点ずつ割り当てられている。作者はペンネーム、都道府県、年代だけが添えられる形で掲載された。年代は10代が3人、20代が1人、40代が2人、50代が1人、60代が4人、70代が1人。都道府県は青森から鹿児島まで9都県にばらけた。
賞は3系統に分かれている。日本テクノ社長賞が5点、同社が発行する環境市場新聞の賞が5点、DNP出版プロダクツ賞が2点。審査の主体を社内の経営、自社媒体の編集、印刷会社の三者に割り振ってあり、1つの部署が12点すべてを決め切る形にはなっていない。公募を回すときに社内で揉めやすいのが選定の責任の所在で、賞を分けておくと「誰が選んだのか」が説明できる。
数字を並べ直すと採用率は作品ベースで約0.036%、1万点につき3〜4点しか通らない。応募した人を分母にしても約0.16%で、7,712人のうち12人だけが採用者になる。残りは落選する。それでも全員にカレンダーが届く、というのがこの企画の骨格になっている。
公募から発送まで、誰が何を担当しているのか
工程は大きく5つに割れる。募集、審査、イラスト制作、印刷、発送だ。
募集は同社のキャンペーンサイトで受け付けるほか、FAXとハガキでも応募できる。応募経路を3つ持っているのは、採用者に10代から70代までが並んでいることと無関係ではない。Webフォームだけに絞ると高齢層と、学校や職場でまとめて参加する団体の紙運用が落ちる。テーマは環境・自然・エコで、12か月ぶん揃える必要はなく、1月だけの応募でも、同じ月に複数出してもいい。
審査は2026年5月28日の締切から9月28日の発表まで、およそ4か月かかっている。この間に33,361点の絞り込みと、12点ぶんのイラストの描き下ろしが並走している。イラストは2018年版から福士昌明さんが継続して担当していて、毎年別のクリエイターに振り直してはいない。年ごとに絵柄が変わらないことが、21年続いた企画の見た目を一本に保っている。
印刷はDNP出版プロダクツの賞が設けられていることから、印刷会社が企画の側に入っていることが読み取れる。2027年版は83,000部を刷り、用紙とインキ由来のCO2およそ31トンをオフセット、印刷に必要な電力4,700kWhを自然エネルギーでまかない、植物油インキを使うと発表している。
発送で目を引くのが、個別包装をせずそのままの状態で郵送している点だ。包装ゴミを減らすためと説明されているが、発注側から見るとOPP袋も封入作業も要らないという話でもある。数万部規模になると封入は外注費として積み上がる工程で、環境テーマとコスト構造がここで一致している。
発注する側が用意するものを裏返すと、応募の受け皿(Web・FAX・ハガキ)、審査の体制と賞の割り振り、イラストを任せる相手との継続契約、応募時に集めた宛先の名簿、そして発送オペレーションになる。物そのものより、名簿と締切の管理が本体に近い。
応募者は3年で5,971人から7,712人へ、増えているのは人数のほう
同社が公表している過去2年ぶんと並べると、伸び方の性格が見えてくる。
| 版 | 応募人数 | 応募作品数 | 1人あたり作品数 | 部数 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年版 | 5,971人 | 25,074作品 | 約4.2作品 | 81,000部を配布 |
| 2026年版 | 6,656人 | 29,260作品 | 約4.4作品 | 約82,000部を配布 |
| 2027年版 | 7,712人 | 33,361作品 | 約4.3作品 | 83,000部を印刷 |
人数は前年比で11.5%増、15.9%増と2年続けて二桁で伸びている。一方、1人あたりの作品数は4.2、4.4、4.3とほとんど動いていない。つまり既存の応募者がたくさん出すようになったのではなく、新しく参加する人が増えている。1人が複数出せるルールは作品数の水増しではなく、初めての人が「1本だけでも出せる」と感じる敷居の低さとして働いているとみるほうが実態に合う。
部数は81,000部、約82,000部、83,000部と1年に1,000部ずつ増えている。応募者の増加は685人、1,056人なので、刷り増した1,000部は応募の伸びと同じ桁に収まる。ただし83,000部のうち応募者の手に渡るのは7,712部で、残りは応募していない相手に配る分だ。公募型は必要部数が事前に読めないのが弱点になりがちだが、5月末に締切を置いて9月に発表、11月に発送という並びなら、印刷の発注までに応募者数が確定する。締切を前倒しに置くこと自体が部数管理になっている。
なお同社のキャンペーンページには2026年版を83,000部配布したとの記載もあり、プレスリリースの約82,000部と食い違う。ここでは最新の発表であるプレスリリース側の数字を採った。
公募サイトと子ども向け環境ポータルが、別々の経路で人を連れてくる
新規の応募者がどこから来ているかは、募集時の露出の広がり方に手がかりがある。2026年版の募集は、デザイン分野の公募を集める登竜門に掲載されている。この種のサイトを見ているのは、公募そのものを趣味や習慣にしている層で、商品を知らなくても応募する。
もう一方で、子ども向け環境活動のポータル「こどもエコクラブ」もイベント情報としてこのキャンペーンを紹介している。同社は学校の環境教育や会社の環境活動の一環として団体で参加する例が多いとしており、1件の応募が数十人単位で立ち上がる経路がここにある。個人を1人ずつ集める広告とは効率がまるで違う。
3つめが自社媒体だ。採用作品は環境市場新聞の2026年秋季・第86号(10月1日発刊)にも掲載される。自社の新聞、Webサイト、SNS、そしてカレンダー本体が互いを参照し合う形になっていて、カレンダーは単独のノベルティではなく自社メディア群の一部として置かれている。
イラストを担当する福士さんは発表に寄せたコメントで、物価高騰や世界情勢、AIの進化、厳しい暑さと変化の多い1年だったと振り返り、それでも日々の暮らしのなかには変わらない日本の良さがあると気づかされたと書いた。作り手のコメントが毎年載ること自体が、参加者にとっての続報になる。
採用されなかった7,700人が、それでも封を開ける
ここがこの企画のいちばんおいしい部分だ。応募した7,712人のうち、自分の作品が載るのは12人。残りの人は載らない。それでも全員にカレンダーが届く。届いた人は何をするか。まず12か月ぶんをめくって、自分のコピーが入っているかを確かめる。
通常のノベルティは、届いた時点では受け取り手にとって「頼んでいない物」だ。開封する動機を送り主側が用意できない。公募型ノベルティは開封する動機を半年前に相手の中に仕込んでおける。作品を出した記憶があるかぎり、封を切る理由は受け取る側の中にある。
そのうえカレンダーは、使い始めれば12か月そこに残る。多くのノベルティが一度使われて終わるのに対し、壁や机の上を1年占有する。開封される確率と、視界に入り続ける期間の掛け算で効いてくる。落選した人にとっても、自分が出したのと同じテーマの作品が9都県・10代から70代の手で並んでいるページは、読み物として成立している。掲載が都道府県と年代つきなのは、「自分と同じような人が採用されている」という手触りを残すためでもある。
そして翌年また募集がかかる。次回は本年12月開始予定と発表されていて、カレンダーが手元に届いた直後に次の募集が立ち上がる並びになっている。配ったタイミングが次の集客のタイミングになる循環で、21年ぶんの連続性はここで担保されている。
参加させる形の販促は物の作り方にも出る。アークテリクスが交通広告の生地を参加者自身にミシンで縫わせたワークショップも、完成品の価値の一部を参加者の手間が作っている点で発想が近い。
平均136冊と83,000部では、単価の話が噛み合わない
ここで立ち止まりたいのが部数の感覚だ。名入れカレンダーを扱うレスタスが自社ECの販売実績を集計した調査(2011年8月から2019年11月、業界が特定できた購入企業7,242件)では、購入割合の1位は建設業界で19.49%、以下、小売8.97%、医薬・医療系5.92%、福祉5.71%、IT・通信5.21%と続く。その建設業界の1社あたりの平均製作冊数は136冊、平均購入金額はおよそ48,833円で、1冊あたりの単価は約359円になる。
日本テクノの83,000部は、この平均の600倍を超える。同じ「企業がカレンダーを配る」でも、経済の組み立てがまったく違う。数百部の発注で単価を下げようとしても、既製品のデザインに社名を刷る以上のことはできない。99枚より100枚のほうが安くなるマルシェバッグの例のように、ロットの段差をまたぐかどうかで単価が動くのは印刷物でも同じで、数百部の側にいる会社が万部の側の手法をそのまま輸入しても合わない。
なので真似るべきは部数ではなく順番のほうだ。100部でも「先に参加させてから配る」は成立する。取引先10社の担当者に一言ずつコピーを出してもらって12点に絞り、社名入りの卓上カレンダーに載せる。部数が小さいほど、載った人の割合は上がる。100部・採用12点なら、受け取る側から見た当事者率は日本テクノの企画よりはるかに高い。規模が小さいことは公募型にとって不利ではない。
11月下旬に配るために、前年の12月から動いている
実務でいちばん効く情報はスケジュールだ。公表されている日付を並べると、2025年12月1日に募集開始、2026年5月28日に締切、9月28日に採用発表、11月下旬から発送。締切はプレスリリースが5月28日、同社の募集リリースとキャンペーンページが5月29日と割れているので、ここでは最新の発表であるプレスリリース側を採った。募集開始から発送まで約12か月、締切から発表まで約4か月、発表から発送まで約2か月で走っている。
既製品に社名を入れるだけの名入れカレンダーなら、夏から秋にかけての発注で年末の挨拶回りに間に合う。公募型はそこに、募集期間(ここでは約半年)と審査・制作期間(約4か月)が前にくっつく。2027年末に配るものを公募でやるなら、逆算すると2026年のうちに募集を立ち上げる必要がある。この差を見落として秋に企画を持ち込むと、その年は普通のカレンダーになる。
印刷そのもののリードタイムや最小ロットは会社と仕様で開きが大きいので、部数・紙・綴じ方を決めたうえで印刷会社に個別に確認するほかない。ただ発表から発送まで約2か月というこの案件の実績は、12点のイラスト完成後に印刷・製本・宛名処理・発送まで含めて2か月という目安として使える。
卓上か壁掛けかは今回の発表では触れられていないが、選ぶときの分かれ目ははっきりしている。卓上は個人の机を取りにいく形で、名入れは台紙の下部か背面に入る。壁掛けは部屋単位で複数人の目に入るかわり、掛ける場所の競争が激しく、捨てられるときは年内に捨てられる。公募型で「自分の作品が載っているか確かめる」体験を狙うなら、1人が手元で繰る卓上のほうが動線に合う。
自社で公募型をやると、どこでつまずくのか
条件を整理すると、成立と不成立の分かれ目は4つに集まる。
1つめは応募のハードルをどこに置くか。キャッチコピーは紙とペンがあれば誰でも書けて、1本なら1分で終わる。これを写真やイラストにすると、撮る・描く・スキャンするという工程が挟まって応募数は落ちる。落ちること自体が悪いわけではなく、対象を絞りたいときは有効に働く。木村鋳造所が18歳以下からA4の絵を募った「妄想かいじゅうずかん」は、あえて手描きにすることで参加者を子どもに限定し、そのぶん賞の設計を立体化3名・参加賞は先着500名と切り分けている。誰に参加してほしいかで、出させる物の重さを決めることになる。
2つめは選定の手間。33,361点を12点に絞る作業は、片手間では終わらない。自社でやるなら1次の足切り基準(文字数、テーマ外の除外、重複)を機械的に決めておかないと、決裁が止まる。賞を複数用意して審査主体を分けるのは、負荷分散としても効く。
3つめは権利まわり。他人が作った文章や絵を自社の配布物に載せる以上、応募規約で採用作品の利用範囲、掲載時の表記(この案件ではペンネーム・都道府県・年代)、二次利用の可否をあらかじめ定めておく必要がある。応募時に取得する住所を発送以外に使わないことも、募集要項の段階で書いておく話になる。具体的な条文は取り扱う内容によって変わるので、自社の法務か専門家に確認するのが早い。
4つめは全員送付にするか抽選にするか。日本テクノは全員送付を土台に置いたうえで、採用者向けの賞と、応募者全体から選ぶ特別賞・学生賞を重ねる二段構えにしている。全員送付は部数と送料が応募数に比例して膨らむかわり、落選者の離脱を防ぐ。抽選だけにすると外れた人には何も残らず、翌年の応募が細る。
なお、応募に商品の購入を条件として付けるかどうかで景品表示法上の整理が変わってくる。この企画のように誰でも応募でき、購入が条件になっていない形と、購入者だけが応募できる形、来店した人全員に配る形では、それぞれ考え方が異なる。金額の線引きは一般論としても取引価額や景品の種類で変わるため、実施前に消費者庁の資料や専門家に当たって個別に確認したい。
電気の会社が環境をテーマに選んだことが効いている
最後に、テーマ選びの話をしておきたい。日本テクノは1995年設立、資本金5億7,194万円、従業員1,742人(2026年7月1日現在)で、キュービクル常時監視システムの販売と電力コンサルティング、高圧電気設備の保安管理・点検、発電・小売電気事業などを手がけている。顧客は高圧で受電している事業所で、電気の使い方を減らす提案が本業そのものだ。
この会社が環境・自然・エコをテーマに公募をやると、なぜその会社がという疑問が湧かない。SDGsの目標13(気候変動に具体的な対策を)への貢献として位置づけられ、カレンダー自体も植物油インキ、自然エネルギーでの印刷、個別包装の廃止、CO2オフセットと、テーマと製法が揃っている。環境をうたいながら過剰包装で送ってくれば、そこで企画は白ける。
逆にいうと、事業と関係のないテーマを選んだ公募は続かない。食品メーカーが宇宙をテーマにコピーを募っても、集まった作品を自社の何に接続するのかが誰にも説明できない。自社の本業から素直に引ける言葉がテーマになっているかどうかが、2年目以降に効く。21年続いているのは、毎年テーマを考え直す必要がないからでもある。
来年の年末に配りたいなら、いま決めるのは3つ
日本テクノのエコカレンダーから持ち帰れるのは、環境をうたうことでも大量に刷ることでもない。配る前に相手を参加させておくと、開封する理由を相手の側に作れるという1点に尽きる。そしてカレンダーは、その開封のあと12か月そこに残る数少ない配布物だ。
公募型を検討するなら、決めるべきことは3つに絞られる。募集開始の月(配布の約12か月前に置けるか)、出させる物の重さ(誰でも1分で書けるものか、対象を絞る手描きか)、そして落選者の扱い(全員に配るか、抽選で絞るか)。この3つが決まれば、部数と予算はあとから積める。
手元の予算が数百部規模なら、公募の相手を不特定多数ではなく取引先や社内に置き換えるところから始めたい。12点の枠に対して母数が小さいほど、載る確率は上がり、受け取った人が自分ごととして開く率も上がる。次回の「エコカレンダー2028」の募集は2026年12月に始まる予定なので、公募の文面や応募フォームの作りを実物で確かめておくと、自社で組むときの設計図になる。
参照元
- PR TIMES・日本テクノ株式会社「『エコカレンダー2027』キャッチコピー募集キャンペーン|応募総数33,361作品から採用された12作品を発表!」
- 日本テクノ株式会社「エコカレンダーキャンペーン」
- 日本テクノ株式会社「日本テクノ独自の環境活動『エコカレンダー 2027』キャッチコピー募集キャンペーンを開始しました」
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- 日本テクノ株式会社「会社概要」
- 登竜門「エコカレンダー2026 キャッチコピー募集」
- こどもエコクラブ「エコカレンダー2026 キャッチコピー募集キャンペーン(日本テクノ)」
- PR TIMES・株式会社レスタス「年末あいさつの定番『名入れカレンダー』業界別の好評デザイン・利用実態調査!」
最終更新:2026.09.28
