深蒸し茶がどこで生まれたのかは、あまり語られません。牧之原市は、自らを「深蒸し茶発祥の地」として、その経緯を公表しています。以下はいずれも同市の説明で、他地域の見解を検証したものではありません。
牧之原市の茶園と品種
牧之原市の掲載ページでは「温暖な気候と長い日照時間が良質なお茶の栽培に適しているため、市内には約2,610ヘクタールの茶園が広がっています」と説明されています(調査年度の記載はありません)。主な品種は「やぶきた」で、最近は「つゆひかり」「さえみどり」など新たな品種の栽培にも力を入れているとしています(牧之原市「深蒸し茶発祥の地 牧之原」)。
農林水産省の産地資料は、静岡県内の茶の例に牧之原茶を挙げ、括弧書きで「最大産地」としています。何についての最大かは同資料に記載がありません(農林水産省「全国各地のお茶産地の紹介」(令和5年8月))。
市が説明する、深蒸し茶の成立経緯
牧之原市は「牧之原のお茶の特徴として、普通の煎茶よりも蒸す時間を長くした『深蒸し茶』が主流です」とし、「蒸し」の時間を2〜3倍長くすることで通常の煎茶に比べてコクや旨みが十分に引き出されると説明しています(牧之原市「深蒸し茶発祥の地 牧之原」)。
生まれた理由も公表されています。市は「深蒸し茶が生まれた理由は、牧之原地域で作られたお茶の弱点を克服するためでした」とし、「通常の蒸し時間で製茶すると、コクと旨みはあるものの苦渋味が残るお茶になってしまいました。そこで、製造行程の蒸し時間を長くすることによって、苦渋味を緩和させたまろやかな味わいのお茶ができあがったのです」と記載しています(牧之原市「深蒸し茶発祥の地 牧之原」)。
市の説明では、長く蒸すことでコクや旨みを引き出すことと、苦渋味を緩和することの両方が挙げられています。
明治時代の手揉み茶製法に由来する
市は「深蒸し茶製茶法は明治時代の手揉み茶製法に由来します」とし、「牧之原地域(現牧之原市)で、明治時代の中期に誘進流の一派を興した戸塚豊蔵が考案した製茶法で、外観より香味を重視しています」と説明しています(牧之原市「深蒸し茶発祥の地 牧之原」)。
その製法は「他の流派より茶葉の蒸し時間を長めて、無理な力をかけず、形状は二の次にしたヨンコン型(茶の形が針状ではなく勾玉状)の製茶法」とされ、「今から約100年前にこの牧之原には既に深蒸し茶が存在していた」と記載されています(牧之原市「深蒸し茶発祥の地 牧之原」)。
なお農林水産省は、蒸し製玉緑茶の別名として「ぐり茶やヨンコン茶」を挙げています(農林水産省「味わいや香りもさまざまなお茶の種類」)。名称が似ていますが、牧之原市が説明する「ヨンコン型」と同じものかどうかは、両資料からは確認できません。
市は「お茶は最終的に浸出液を飲用するので、見た目や色沢を良くしたお茶より、外観は少し悪くても飲んでおいしいお茶を奨励しました」と、この製法の考え方を説明しています(牧之原市「深蒸し茶発祥の地 牧之原」)。
深蒸しの位置づけを整理する
| 名称 | 何を指すか | 出典 |
|---|---|---|
| 深蒸し煎茶 | 生葉の蒸し時間を煎茶の2倍以上長くしたもの | 農林水産省 |
| 牧之原茶 | 牧之原市が「牧之原のお茶」として紹介している茶。市は深蒸し茶が主流としている | 牧之原市 |
| ヨンコン型 | 茶の形が針状ではなく勾玉状になる製法として、牧之原市が戸塚豊蔵の製法について用いている表現 | 牧之原市 |
深蒸しは製法、牧之原茶は産地の名前です。深蒸し煎茶の定義は深蒸し煎茶の項に、同じく深蒸しが主流とされる銘柄は掛川茶の項にまとめました。
商品企画で区別しておきたい用語
- 深蒸しは製法、牧之原は産地の呼称。どちらを指定したいのかを分けて書く
- 「深蒸し茶発祥の地」は牧之原市の説明。配布物に書く場合は主張の主体を明示する
- 市が挙げている品種はやぶきた、つゆひかり、さえみどり。実際に指定できるかは仕入れ先の対応による
ほかの用語は用語集に、法人向けお茶ノベルティの品目選び・ロット・納期はお茶ノベルティの記事にまとめています。
よくある質問
深蒸し茶はどこで生まれたのですか?
牧之原市は同市を「深蒸し茶発祥の地」としています。市の説明では、深蒸し茶製茶法は明治時代の手揉み茶製法に由来し、その製法は牧之原地域で誘進流の一派を興した戸塚豊蔵が考案したもので、茶葉の蒸し時間を長めたヨンコン型だとされています。
牧之原茶はすべて深蒸しですか?
牧之原市の説明は「深蒸し茶が主流です」というものです。すべてが深蒸しであるとまでは記載されていません。
ヨンコン型とは何ですか?
牧之原市は、茶の形が針状ではなく勾玉状になる製法だと説明しています。農林水産省は、蒸し製玉緑茶の別名としてぐり茶・ヨンコン茶を挙げています。
まとめ
牧之原市は、市内で生産される茶について深蒸し茶が主流だとし、市内に約2,610ヘクタールの茶園が広がっていると説明しています。同市は自らを深蒸し茶発祥の地とし、明治時代中期の戸塚豊蔵による、外観より香味を重視したヨンコン型の製茶法に由来すると説明しています。深蒸しについて市が挙げているのは、コクや旨みを引き出すことと、苦渋味を緩和することの両方です。
最終更新:2026.09.09
