「深蒸しにしますか」と聞かれたとき、味の濃さの話だと受け取ってしまうことがあります。深蒸しは味の表現ではなく、製造工程を指す言葉です。
深蒸し煎茶は何を指す言葉か
農林水産省は「生葉の蒸し時間を煎茶の2倍以上長くしたものは深蒸し煎茶と呼ばれ、濃い緑色と濃厚な甘みが特徴です」と説明しています(農林水産省「味わいや香りもさまざまなお茶の種類」)。
比較の前提として、煎茶の製造工程を押さえます。農林水産省は煎茶を「生葉を蒸して、熱を加えながら回転ドラム内で揉み(粗揉)、熱を加えず円運動をする揉捻機で揉み込むことで茶葉内の水分をもみ出し(揉捻)、熱を加えてさらに水分を飛ばし(中揉)、茶葉の形を針状に伸ばしながら乾燥させる(精揉)という製法」と説明しています。主な産地は静岡県、鹿児島県、宮崎県で、日本で生産量が最も多いお茶です(農林水産省「味わいや香りもさまざまなお茶の種類」)。
| 煎茶 | 深蒸し煎茶 | |
|---|---|---|
| 分類 | 茶種 | 煎茶のうち、蒸し時間を長くしたもの |
| 生葉の蒸し時間 | (この工程が基準) | 煎茶の2倍以上 |
| 資料に記載された色・味 | 程よい渋みと、青々しい爽やかな香りや色 | 濃い緑色と濃厚な甘み |
両者の違いとして農林水産省の資料が明記しているのは蒸し時間です。
かぶせ茶・玉露とは、資料の説明の軸が違う
農林水産省の資料では、深蒸し煎茶は蒸し時間、かぶせ茶や玉露は収穫前の栽培方法に着目して説明されています。着目している段階が違うため、同じ土俵で並べると分かりにくくなります。
| 茶種 | 資料が説明の軸にしているもの |
|---|---|
| 深蒸し煎茶 | 加工の段階(生葉の蒸し時間) |
| かぶせ茶 | 栽培の段階(摘採前の遮光期間) |
| 玉露 | 栽培の段階(遮光期間と、一番茶のみを使うこと) |
| 番茶 | 原料(新芽が伸びて硬くなった茶葉や茎など) |
深蒸しの産地として資料に出てくるもの
農林水産省の産地資料で、深蒸しとの関係が書かれているのは次の2つです(農林水産省「全国各地のお茶産地の紹介」(令和5年8月))。
| 名称 | 資料の記述 |
|---|---|
| 深蒸し菊川茶(静岡県) | 地理的表示(GI)を取得 |
| 三重県 南勢地域 | 北勢地域の「かぶせ茶」、南勢地域の「深蒸し煎茶」など、各地の地形や気候の特徴を生かしたお茶が生産されている |
銘柄では、掛川市が「掛川で作られるお茶は、普通煎茶よりも蒸し時間を2倍から3倍長くした『深蒸し煎茶』が主流です」と説明しています(掛川市「深蒸し掛川茶の特徴」)。詳しくは掛川茶の項にまとめました。
仕様書では、製法・産地・銘柄を分けて書く
深蒸しは製法の指定であって、産地や銘柄の指定にはなりません。逆に、深蒸し菊川茶のように名称自体が製法を含むものを除けば、銘柄を指定しても製法まで決まるとは限りません。
| 書きたいこと | 指定する内容の例 |
|---|---|
| 製法を揃えたい | 深蒸し煎茶(生葉の蒸し時間を長くしたもの) |
| 産地を揃えたい | 静岡県産、三重県南勢地域産など |
| 名称の裏づけがほしい | 深蒸し菊川茶(地理的表示を取得した名称) |
この記事で確認しているのは、製法・産地・銘柄の区別です。品種、具体的な蒸し時間、抽出条件、価格、ロット、納期は農林水産省の資料には書かれていないため、商品を選ぶ段階で仕入れ先に確認します。
ほかの用語は用語集に、法人向けお茶ノベルティの品目選び・ロット・納期はお茶ノベルティの記事にまとめています。
よくある質問
深蒸し煎茶と普通の煎茶はどう違いますか?
農林水産省の説明では、生葉の蒸し時間を煎茶の2倍以上長くしたものが深蒸し煎茶です。濃い緑色と濃厚な甘みが特徴とされています。
「深蒸し茶」と「深蒸し煎茶」は同じですか?
同じものとして扱ってよいかは、参照した資料からは確認できません。農林水産省の茶種一覧は「深蒸し煎茶」と表記し、「深蒸し茶」という語は使っていません。一方で牧之原市など自治体の資料は「深蒸し茶」と表記しています。両者の関係を定義した記述は見当たらないため、パッケージや仕様書ではどちらの表記を使うかを決めておきます。
まとめ
深蒸し煎茶は、生葉の蒸し時間を煎茶の2倍以上長くしたもので、濃い緑色と濃厚な甘みが特徴とされています。製法を指す言葉なので、産地名や銘柄名とは別の区分です。農林水産省の産地資料で深蒸しとの関係が確認できるのは、地理的表示を取得した深蒸し菊川茶と、三重県南勢地域です。銘柄では、掛川市が深蒸し煎茶を主流としています。
最終更新:2026.09.09
